「す〜は〜、す〜は〜………よしっ!」

 僕は教室の扉の前で大きく深呼吸をし、覚悟を決めた。

 今日から僕は変わるんだ―――――。

 

 

 

 初めまして、みなさん。

 僕は碇シンジです。

 この街に来て………つまり浩平さんやミサトさん達と知り合ってから2週間が立ちました。

 そうです。『ななぴー改』と呼ばれる怪獣と戦ってから既に2週間が立ったと言う事です。

 浩平さんの助言も合ってなんとか『ななぴー改』を倒した僕でしたが、あれからこの街―――第三新東京市に僕は住み着いています。

 理由は『ななぴー改』がまだここに来るそうなのです。

 あれと戦うのは正直嫌でしたが―――断ってリツコさんの改造を受けるのはもっと嫌でした。

 仕方が無く、僕はエヴァンゲリオン初号機(あの悪趣味な紫色のロボットの事です)のパイロットになる事を承知して、ミサトさんの隣の部屋に住む事にしました。

 でも、まあ、僕がパイロットにさせられたのは零号機(こっちはオレンジ色らしい。差別だ)の専属パイロットが意識不明の重体なので素人の僕に頼るしかない、という訳なのですけど。

 だから、その専属パイロットさんが回復すれば、僕は晴れて自由の身………ちょっと安心しました。

 バイト代はでるみたいだし、この際成人するまでの生活費ぐらいは分捕ってやろうと思っているところです。

 

 

 そして、色々面倒な手続きや準備を終え、今日僕は中学校へやってきました。

 ここには前の根暗でウジウジした僕を知る人はいません。

 だから、これを機に僕は変わるのです。

 あんなオモシロ髭親父になんか頼らず、一人で逞しく生きていく為に!

 

ガラガラッ

 

「転校生の碇シンジです! よろしくお願いします!」

 

 ネルフで習った軍事式の敬礼で第一印象はばっちり―――――

 

「おお、きたな少年。よろしくな」

 

ずがしゃああああ

 

 

こうして波乱含みの僕の新しい学校生活が始まったのでした。

 

 


 

ONEVA

 

第3話   ななぴー(オリジナル)、襲来 Aパート

 


 

 

「どうした、少年? そんな先頭の机を巻き込んだアクションなんぞして?」

 

 うぐぅ少年は教室に踏み込むなり、入り口付近の机(と生徒)を巻き込んで転ぶ。

 さすがうぐぅだ。掴みはバッチリだな。

 

「な、なんで浩平さんがっ!?」

「失礼な。担任の俺がいちゃ悪いのか?」

「担任〜〜〜〜〜!?」

 

 頭を抱えて絶叫するうぐぅ少年。

 むぅ、俺より面白いぞ。ちくしょう。

 クラスの生徒達も面白そうにうぐぅ少年を見ている。

 

「だって、教員免許は!?」

「………まあ、気にするな」

「気にしますよーーー!! 担任って、どうやってなったんですかーーー!?」

「それは秘密だ」

 

 実はここの元担任に快く譲ってもらったのだ。

 経緯は1週間半前、レイを学校に送ってきた時にまで遡る―――

 

 

 

『おや、あなたは?』

『うっす。レイの保護者です』

『………問題ないわ』

『ほうほう、綾波さんの………』

『それで先生、相談があるんですけど。教師にでも雇ってもらえませんかね』

『………問題ないわ』

『教師に? 何故ですか?』

『いやあ、俺、今無職なんですよ。それに担任にでもなれば、レイを近くで見てやれますし』

『………問題ないわ』

『ほうほう。良い心がけですねぇ。分かりました、良いでしょう』

『えっ、マジですか!?』

『………問題ないわ』

『ええ、私は副担任になって職員室に隠居しますから。あなたが担任をしてください』

『わっかりました!』

『………問題ないわ』

 

 

 

 と、まあ、そんな訳で一週間前から担任に………。

 あの元担任のじいさん、髭と一緒で大らかな感じがしたんだよな〜。

 教員免許については………何にもいわれんかったし良いだろ。

 

「そ、そんな成り行きで………」

 

 うぐぅ少年が頭を抱えて蹲っている。

 どうやら俺の考えを読んだらしい。

 まったく人のプライバシーを考えない奴だ。

 

「誰も読んでませんよ! 浩平さんが身振り手振り付きで説明してくれました!!」

「「「「「確かに」」」」」 

 

 うぐぅ少年の言うことに賛同するように一斉にうんうんと頷く生徒(ガキ)ども。

 どいつもこいつも超能力者ばっかりだ。

 

「まあ、いい。とにかく座れ」

「え………でも、まだ自己紹介が」

「さっき教室に入った時の芸で十分だ、座れ」

「座れってどこに………」

「そうだな………レイの横に座れ。空いてるからな」

「レイ……さんってどの人ですか?」

「無知な奴め。窓際一番後ろの、目を開けたまま起きてるフリしてる奴だ。座るついでに起こしといてくれ」

 

 むぅ、レイの奴。俺が教えた奥義を三日でマスターするとは………やるなっ!

 うぐぅ少年は疲れた表情をしたものの、レイの隣の席まで歩いていく。

 席に座り………恐る恐る、レイの肩に手を伸ばしてゆっくり揺する。

 

「あの………君?」

「………………あなた、だれ?」

「碇シンジだけど………さっき、自己紹介したよ?」

「………寝てたもの」

「そ、そう……」

 

キーンコーンカーンコーン

 

「よーし、HRを終わるぞ。ちゃんとそこなうぐぅとレイの様に仲良くしてやるんだぞー。鞄にミミズ詰めたり、机の中を水槽にしたりしてなー」

「折原先生、それっていじめじゃ………?」

 

 クラスの最後の良心、委員長の洞木が何かを言った気がしたが無視だ。

 

「次は俺の受け持ちの国語だから、1時間目は転校生への質問タイムとする」

 

 俺がそう告げるとクラス中から歓声が沸き起こる。

 決して、授業するのが面倒なわけじゃないぞ。

 

 

 

 

 

「ねえねえ、碇君。折原先生とどういう関係? 知り合いみたいだったけど?」

「碇、折原先生と綾波の関係知ってるか? 今第壱中学最大の謎って言われてるんだけどよ……」

「えーっ、最大の謎は折原先生が何才かじゃない? どう見ても二十歳行ってないしー」

「ばっか、さっきの担任になった経緯聞いたろ? だったら二十歳になってなくても不自然じゃないだろが」

「あ、そっかー」

 

 どうやら、クラスの質問の大半が俺とレイ絡みの様だ。

 うぐぅ少年はちょっぴし涙ぐみながら対応している。

 すまん、少年。別に何もしてやらんが、心の中では謝っといてやる。

 

ガラガラッ

 

 教室の後ろの扉が開き、ジャージの姿の男子生徒が現れる。

 見ない顔だな。………いや、どこかで見た気もするが思い出せん。

 

「なんや。ちょっと見ない間にずいぶん減ったのう」

「おっ、トウジ。久しぶりじゃんか」

 

 トウジと呼ばれたジャージメンは、クラスでも1・2を争うぐらい見所のある(注※面白そうな、もしくは問題を起こしてくれそうな奴)相田ケンスケの元へ行く。

 

「2週間も学校に来ないでどうしてたんだよ?」

「ああ………妹のやつがな………2週間前から………」

「2週間前!? もしかして、この前の戦闘で怪我したのか!?」

「そやない! ………巻き込まれたのは確かやけど、怪我はしとらん」

「なんだ、よかったじゃないか」

「全然よかないわっ!!」

 

 ジャージメンはドバンッと机を叩いて、立ち上がり今にもオーバーヒートしそうなほど顔を真っ赤に染めている。

 

「お、落ち着けよ。オレに当たってもしょうがないだろ?」

「ああ………すまん」

「で、妹がどうしたんだ?」

「2週間前から………知らん男の家にシケこんどんのや!!

「シ、シケ込んでるって、トウジの妹まだ小5だろ?」

「そうやっ!! まだミサは11なのに、それやのに………ぐぅっ!!」

 

 そこまで言うと男泣きを始めるトウジ。

 相田はジャージメンを宥めるように肩を叩く。

 

「な、なあ、勘違いじゃないか? 小5だぜ?」

「電話して来たんんじゃ! 『おにいちゃん、今私、彼氏の家にいるの。しばらく帰れないから、じゃあね〜♪』って!!」

「それは………(汗)」

「ぜぇぇったい、ミサは騙されとるんじゃ!! 今、悪い男に捕まって泣いとるのがワイには分かる!! ミサァァ!! どこにいるんじゃぁぁぁ!?」

 

 号泣し始めるジャージメンに相田はどうしたらいいか分からないのか固まったまま、汗を流している。

 それにしても………悪い奴はいるもんだ。

 

「ええーーーー!! 碇君ってあのロボットのパイロットなのーーー!?」

「バ、バイトだよ………正規の人が来るまでの」

「「「すげぇーーー!!」」」

「だ、だから………」

「どうやって選ばれたんだよ!?」

「必殺技とかあるんだよな!?」

「碇君、怖くないの?」

「すごーーい! かっこいい、碇君!!」

「だから……そのですね………」

 

 うぐぅ少年が鬼ロボのパイロットだと言う事実が知れ渡った途端、一躍英雄扱いされて囲まれる少年。

 あれって、実は苛めじゃなかろーか。

 あ、揉みくちゃにされてるし。

 

 

 そんな少年をジャージメンは鋭く、そして憎悪の籠もった視線で見つめていた。

 あーあ、ありゃ八つ当たりするな………。

 少年、怨むなら止めない俺じゃなくて、ジャージメンの妹を誑かした悪い男を怨んでくれ。

 

 

 ちなみにレイはこの騒ぎの中、身じろぎ一つせずに眠っていた。

 

 

 

 

 

「ワイはおんどれを殴らなきゃ気が済まんのやーーー!!」

「わわっ!?」

 

 うぐぅ少年を中庭に呼び出したジャージメンは前口上抜きで殴りかかる。

 が、巧みにうぐぅ少年は避ける。見た目に反して上手いぞうぐぅ。

 

「な、何するんだよ!?」

「五月蝿いっ! お前がいなきゃミサは、ミサはーーー!!」

 

 少年が拳を避けながら理由を問いただすが、もう既にジャージメンはテンパって説明できる状態じゃない。

 がんばれうぐぅ。

 負けるなうぐぅ。

 ちなみに俺は中庭に続く入り口のドアから見守ってるぞ。

 

「しょうがない………こうなったら………」

 

 うぐぅ少年はそう言い放つと、後方にジャンプし一気に離脱する。

 そのまま、校舎の影へと走っていく。

 ………逃げた!?

 

「待ちやがれ! こん卑怯もん!!」

 

 ジャージメンはそれを追いかけて校舎の方へ走っていき―――――

 

「奥義『曲がり角からこんにちわっ♪』!」

 

ドゴッ

 

「ぐへぇっ!?」

 

 校舎の影から飛び出してきたうぐぅ少年の体当たりを諸に受け、ジャージメンは無様に地面へと転がった。

 な、なにっ!? うぐぅ、貴様、一度教えただけで奥義をマスターしたというのか!?

 

ゲシッゲシッゲシッ

 

 しかも、教えたとおりヤクザ蹴りで追い討ちだ。

 うぐぅ少年、凄いぞ見直した。お前なら俺の後継者に―――。

 

「や、やめてくれっ、碇! トウジに悪気は無かったんだ!」

 

 暴走気味だったうぐぅ少年(&俺の思考)を止めたのは今まで木の陰から様子を見ていた相田だ。

 

「え、うん………。理由、聞かせてもらえる?」

 

 

 

かくかくしかじか、かくしかじか

 

 

 

「そ、そんなの、思いっきり八つ当たりじゃないか! 僕は無関係だよっ!!」

 

 げしげしとスタンピングを再開する少年。

 

「うわああっ! やめてくれっ! 悪かったから!!」

「はあ……はあ……そ、そうだね。殴られなかったし、水に流すよ」

 

 水に流すには、うぐぅ殴りすぎだと思うのは気のせいだろうか?

 

「そ、そうか。サンキュ。トウジもちょっと頭に血が上りすぎて暴走しててさ。普段はいい奴なんだぜ?」

「うん、妹さん想いで良い奴だね。友達になれそうだよ」

 

 はっはっはと気絶したジャージメンの横で朗らかに笑い合ううぐぅ&メガネ。

 中々に良い光景だ。

 笑いを堪えるのに一苦労だぞ。

 

プルルルル

 

 そんなほのぼのとした空気をぶち壊す様に流れる電子音。

 うぐぅ少年は顔を引き攣らせると、ポケットに入れていた携帯を取り出す。

 そして、2・3言携帯で話し………呟く。

 

「な、ななぴー改が来た………」

「なっ、碇、例の奴が来たのか!?」

「うん………もうすぐここにも非常事態宣言が発令されると思うから、ジャージ君を連れて避難して」

「碇………大丈夫か? 顔が引き攣ってるぞ」

「だ、大丈夫………浩平さんから教わった奥義もあるし」

「折原先生から!? もしかしてあの人教官とかなのか!?」

 

 驚愕の事実に目を剥く相田。この俺もビックリだ。

 

「ううん、全然無関係の人だよ」

「そ、そうなのか………」

 

 ちょっと意気消沈する俺と相田。

 勘違いしてくれていた方が楽しいのに。

 

「うん、じゃあ、行って来るよ!!」

「ああ、頑張ってくれ!!」

 

 ガシッと友情の熱い握手を二人は交わすと、別々の方向へ走っていく。

 ちなみにジャージメンは置いてきぼりだ。

 

「………浩平様」

「お、レイか。じゃあ、避難するか。ちゃんと学校でやった避難訓練覚えてるだろうな?」

 

 俺は覚えてない。レイが頼りだ。

 

「私………戦わなくていいの?」

「どうして戦う必要があるんだ? 危ない仕事はうぐぅに押し付けて俺達は高笑いしてれば良いのに」

「私は………使徒を討つ者だから」

「それはゲームが違う。メーカーも違うしな」

「………でも、うぐぅがいる」

「ぐあっ………それは言うな。作ってる面子は一緒だから良いんだ」

「………さっきと言ってる事が違う」

「ぐぅ、聞き分け悪い子は夜に可愛がってやら無いぞ。今日はミサキだけにしようかなぁ?」

「………それは嫌」

 

 俺達はそんな事を話しながら、避難所へ向かった。

 

 

 

 

 

「………あ」

「………どうしたの、浩平様?」

「生徒誘導すんの忘れてた」

 

 ついでにジャージメンも。

 

 

 

 

 


 ななぴー(オリジナル)はBパートで登場。

 ………後編は首を長くして待てぃ(笑)

 

 おっと、「私は使徒を討つ者だから」このセリフは感想メールをくれたpiriyoさんのネタでした。

 ご協力、ありがとうございました〜♪

 


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