ちゅんちゅん………
外から鳥の鳴き声が聞こえる。
窓から陽射しが差し込み、部屋を明るく照らしている。
朝だ。
『鳥の声』だとか『陽射しが差し込む』だとかありがちな表現をするぐらい朝だ。
「知らない天丼………もとい、天井だ………」
真っ白………ではなく、コンクリートで剥き出しの汚い天井を見つめながら、呟いてみる。
………そういや、ここ何処だ?
ベットに寝転がる俺が視線を隣に移すと、青銀の髪が目に入った………って、おい!?
「…………」
スッと目を開け、静かに起き上がる青髪赤瞳の少女―――レイ。
もちろん、素っ裸だ。
レイは俺を凝視すると、ポッと頬を赤く染め………。
ススッ、ピトッ
「浩平様………」
「またか!? またやっちまったのか、俺!?」
「ふわぁ………」
「………え゛?」
ぎぎぎぃっと首をレイとは反対方向に向ける。
するとそこにはポニーテールがぷりちーな、ザ・小学生的娘。
同じく、素っ裸だ。
「浩平さん、おはようございます♪」
女の子はレイと同じ様に俺の二の腕にしがみ付いて、すりすりと猫のように頬擦りする。
ジーザス! 何も覚えてないぞ!! 思い出せ、俺!
覚えてないなんて勿体無いげふんげふん。
じゃなくて、どうしてこうなった!?
俺はズキズキと痛む頭の痛みと、両腕に当たるレイと女の子のふにふにとした膨らみを味わいながら、昨日の事を思い出していった。
「ハロー♪ はうあーゆー?」
「な、なんなの!? 君は!?」
「人が挨拶してるのに『なんだ』はないだろ、失礼な」
レイを抱いたまま、病院(この事務所には病院まであった………たぶん、怪我人が多いのだろう。抗争とかで)まで来た俺は医者らしき女性に声を掛けたが何故か狼狽している。
ぬぅ………ちょっと客観的に考えてみよう。
レオタード姿&包帯姿の血塗れ女子中学生を腕に抱いて、『ハロー』などと話し掛けてくる男子高校生………。
ぐあっ! あ、怪しすぎるぞ! 捕まっても文句言えんぞ。
「うぅ………」
レイが腕の中で弱々しくうめく。
ちぃ、一旦考えるのは保留。今は治療の方が先だ。
「なあ、こいつ重傷なんだぞ。細かい事は良いから治療してくれぃ!」
「わ、わかったわ……こっちに来なさい」
女医も怪しげな俺(自分で言って悲しいが)の事は保留して、レイの治療を優先させる事にしたようだ。
俺は案内されるまま、診察室に入りレイを診察台に寝かせる。
どう見ても20台前半の女医は、素人の俺から見てもかなりの手際で傷を見て、同時に止血していく。
「酷い………傷口が開いてる………。ねえ、君。この娘、ファーストチルドレンでしょう? 確か彼女は入院していた筈なのに、何故こんなに怪我が悪化しているの!?」
「ふぁーすとちるどれん?」
「何も知らないのね。………ダメ、傷口を縫わないと血が止まらない」
女医は看護婦に『すぐに手術(オペ)の準備を!』と叫ぶと俺の方を向く。
「君には後で事情を聞くわ」
「うむ。スリーサイズ以外なら答えてやろう」
「………ここで大人しく待ってなさい」
という訳で、手術が終わるまで事務所を探検だ。
「むぅ………建物の中を探索するつもりだったのに、何故外に出る?」
歩く事数十分。
俺が辿り着いたのは明らかに事務所の外。
クソ高い高層ビルが立ち並んでいて、そのビルのほとんどがミサイルを吐き出している事とうぐぅ少年が乗っている筈の鬼ロボとななぴー改が喧嘩している事以外は平凡な街並みだ
ドゴォォォォォン
俺の右手にあったビルが景気良く吹き飛ぶ。
「………もしかして、俺、またピンチか?」
さすがにビルの瓦礫の下敷きになったら、この俺といえども危ない。
良いものを見せてもらったし、もう病院に戻るか。
俺はくるっと後ろを振り向き、今さっき出てきた鋼鉄の扉に入ろうとして………
ドドドドドドォォォンン
鋼鉄の扉はあっさり瓦礫の下に埋もれてしまった。
「………ぐあっ」
逃走不能。
ドゴオオオンンン
さらに駄目押しするが如く、扉があった辺りに飛んでくる鬼ロボ。
俺内部のうぐぅ少年滅殺ポイント100アップ(※ちなみに5ポイント溜まると半殺し、10ポイント溜まると全殺しだ)
………つーか、今良く潰されなかったな。ほんの2・3メートルずれてたら即死だぞ俺。
『こ、浩平さん!? なんでこんな所に!?』
俺がボーゼンとしていると、鬼ロボからうぐぅ少年の声が響く。
「俺の溢れんばかりの好奇心が満たされなくてな。ちょいと未知なる道へ歩んだ俺の前にお前が飛んできたんだ」
『………つまり暇だからってうろついてたら、いつの間にか外に出てしまって、僕に押しつぶされそうになったんですね』
「ぐっ、やるな、少年。3点やろう」
『あんた達、漫才してないで状況を考えなさ〜〜い!!』
「『ぐあっ!?』」
突如、近くに立っていたスピーカーから響いてきた絶叫に俺と鬼ロボは耳を押さえて蹲る。
ぐっ、こ、この声は………三十路女、葛城チサト!?
『ミサトよ! ミサト!! それにあたしはまだ花の20代よっ!!』
「なにっ!? 偽証は犯罪だぞ!? それを知ってて20代を名乗るかおばさん!?」
『がっ………がああああ!!! あたしはまだ29だぁぁぁぁ!!! それに誰がおばさんだぁぁぁぁ!!!』
おおっ、おばさんブチ切れ。
っていうか、折角前々回(第1話Aパート)に始末したと思ってたのに無事だったのか。ちっ。
しばらくの間、スピーカーからおばさんの叫び声と暴れる音が響いていたが、バチィというまるで違法スタンガンでも使用したかの様な音と何かが倒れた音がして、静かになる。
『折原君、だったわね。死にたくなかったらさっさと逃げなさい』
代わりに聞こえてきた声はお水のおばさんPART2―――もとい、エセ金髪おばさんの声だった。
「さすがに死にたくは無いからな、逃げるとするか。がんばれ少年。俺が安全圏に退避するまでは殺られるなよ」
『うぐぅ、酷い………浩平さん、僕の事嫌いなんですか?』
「男を好く趣味は無い。勝手に死ね」
『うぐぅ』
と、うぐぅ少年と話している間にもどんどんななぴー改は近づいてくる。
「ちっ、仕方ない。俺がアドバイスしてやるから良く聞け」
『シ、シンジ君、使徒を倒すのに素人の言う事なんて聞いちゃ駄目よ! 特にそこのクソガキのは!!』
スピーカーから響く、葛城マサトの声。もう復活したのか? 30代の中年の癖に回復(リカバー)速いな。
『あたしはミサトよ! マサトじゃまるで男じゃない! それに中年って………』
「おい、少年。アドバイスを聞きたいなら、あのスピーカーを捻じ切れ。うるさくてかなわん」
『は、はい』
俺の言葉に素直にスピーカーを引っこ抜く鬼ロボ(INうぐぅ少年)。
『あの〜、中の通信機で、まだミサトさんが叫んでるんですけど………』
「コンパネを叩け、角度は45度だ」
『(ガンッ)あ、止まりました』
………中学生のガキに叩かれて止まるのか、鬼ロボ通信機。
『そ、それで……アドバイスって』
「よし、良く聞けよ。まず、ビルの影に隠れるんだ」
『は、はい』
またもや、素直にビルの陰に隠れる鬼ロボ(INお馬鹿なうぐぅ少年)
「使徒が来るのをじっと待つ………そして」
『そ、そして?』
「来たら、ダッシュで体当たりだ。肘を鳩尾に入れるのを忘れるな。これぞ対ななぴー用奥義『曲がり角からこんにちわっ♪』だ」
『そんなので本当に大丈夫なんですか!? 相手は怪獣なんですよ!?』
「大丈夫だ。俺も怪獣(七瀬)と戦った事はあるがこの奥義で奴は5分は動けなくなる。そうしたらヤクザ蹴りでもなんでもかまして袋だ! いいな!?」
『は、はい。頑張ります!』
「でわ、俺は避難する。グッドラック、少年!!」
そういい残すとダッシュで走り去る俺。
後ろをちらりと確認するとビルの陰で息を潜める鬼ロボ(INさよならうぐぅ少年)
がんばれよっ! 俺が逃げ切るまで!
ぬおおおおっ!!
走る!
走る!
走る!
このスピードを維持できるのは俺と長森だけだと自負するぜ!!
ビルの合間をすり抜け、瓦礫の上を突っ走り、そこらを走っていたジャージ君を殴り飛ばし(『邪魔だっ!』OR『出てこなければ、やられなかったのにっ!』)、とにかく走る!
そして、おね高校で『誰よりも(登校が)遅い韋駄天浩平』の異名をとる俺が足を止めたのは、か細い声が聞こえたからだった。
「うぇ〜ん………おにいちゃ〜ん」
むっ、この声は………。
ビルの瓦礫の上で足を止め、声の発生源を捜す。
「誰かいるのか〜? 聞こえなかったら返事しろ〜」
「えっえっ………? あ、あの、聞こえてるんですけど、助けてくれませんかー!」
俺の足元から声は聞こえてきた。
ちょっと横に退き、瓦礫を退けるとそこには足が挟まって動けない女の子が―――――ちっ、まだ小学生か。
とりあえず踏んでいた事は微塵も顔に出さず、話し掛ける。
「よおっ、こんな所にいると風邪ひくぜ! じゃあなっ!」
「ええっ!? た、助けてくださいよっ!」
フレンディに挨拶したが、不評のようだ。
「お、お願いです。見捨てないで下さい!」
顔チェック。
かなり良し。
年齢は小学校高学年と言う所だろうが、あと4・5年もすれば立派な美人になると予測される。
俺内部で論議が交わされる。
俺1(本能)『先行買いで助けるに一票』
俺2(知性)『ななぴー改が迫っている。ガキには構わずさっさと逃げるに1票』
俺3(理性)『こんな子供を見捨てるのは俺的に駄目。助けるに1票』
俺本人「ふっ、見捨てるなんて出来るわけねーじゃないかっ! 女子供に優しくするのは俺のポリシーだっ!」
ちなみに中年のおっさん辺りだったら、見捨てていたのは当たり前の事だったりする。
「ちょっと待ってな。よっと……」
「あ、ありがとうございます………私、鈴原ミサキ、11才です!」
足を挟んでいた瓦礫を退かすと、女の子はパタパタと服を叩いて乱れを直してから頭を下げる。
みさきとはまた不吉な………。
今にも『カツカレー10杯は食べれるよ♪』とか幻聴が聞こえてきそうだ。
ま、不吉な名前だろうが、なんだろうが名乗られたんだ、名乗り返すのが礼儀だな。
「折原浩平、18才。趣味はゲームだ。あ、ちなみに18禁はやらないぞ」
自分の存在を否定するかのような言動だが、概ね本当である。
うちにはパソコンがないし、ゲームより生の方が好きだからである。
「はっ、そんな事より、こんな所でウロウロしてたら死ねる! 話は後だ!」
「わ〜、分かりましたぁ〜〜」
俺はミサキを小脇に抱くと、急いで走りだす。
………ちょいと分が悪いな。
いくら小学生で軽いとはいえ、俺のスピードは2分の1に下がってしまっている。
まだ鬼ロボから1キロも離れていない………ななぴー改のサイズを考えると、余波は平気で来るだろう。
「どうする………ん?」
俺の走っていく道路の先に制服姿の少女が見える。
ぐあっ! マジか!?
もしかして、二人も小脇に抱えなきゃいけないのか!?
さすがの俺様もそれでは走れんぞ。
「そこのー! もう俺は満車だからてめえで走れーーー!!」
叫ぶが反応無し。走って逃げるどころか歩く素振りすら見せない。
どんどん近づいていくとだんだん制服姿の少女がはっきり見えてくる………。
たぶん中学辺りの制服に珍しい青銀の髪。そして赤い瞳―――
「………浩平様」
「って、なんでレイ!? おまえ、手術中じゃ!?」
制服姿の少女―――レイは無表情で、俺に並走する。
何故か、怪我一つしていなかった。
レイは一緒に走りながら、俺をじっと見つめるだけで何も答えない。
推測してみよう。
A、手術が成功して、無事完治。
B、実は本人ではなく、双子の姉妹とか従姉妹というオチ。
C、某KANONの食い逃げうぐぅの如く、幽体離脱で生霊状態。
Aは常識で考えて無理だな。30分やそこらで完治するとは思えない。
Bは……さっき、俺の名前呼んだしな。レイが手術中に双子に電話で俺の事でも話題にしない限り無理だろう。
と、言う事は………
「………そうか、Cだな!?」
「………Cって何?」
残念。
こいつは俺の考えを読めなかったようだ。
てっきり、この街の人間は超能力者ばっかりだと思ったのに。
(※たまたま口に出さなかっただけ)
「まあ、いい! とにかく今は逃げるぞ!」
「………ええ」
「はいっ!」
俺の言葉にレイと脇に抱いたミサキが返事を返す………。
レイはともかく、お前は抱っこされてるだけだろが。
「はわっ、ごめんなさい〜(泣)」
………こっちは超能力者か。
(※たまたま口に出ただけ)
長い長い回想を終え、ようやく思い出した。
そうだ………あれから、レイの家まで走って………。
で、汗かいたから、3人でシャワー浴びて………。
『………さっきのCの意味、何?』
『私もCの意味、知りたいです』
『C? Cっていうのは………こういうことだ〜〜!!(がばぁ)』
『『きゃ〜っ♪』』
と、Cの意味(C違い)を実践で教えて………はっ、やっぱり最後までやっちまってるぞ(笑)
「………浩平様(ぽっ)」
「浩平さ〜ん♪(ぽっ)」
すりすり♪×2
………ぐあっ、俺、ロリコンか?
先行買いどころか、小学生の段階できっちり手を出してるし。
そういや、生霊でも(自主規制)って出来るんだな。
まあ、某奇跡青年、木目シ尺ネ右一も生霊に手をだしてたみたいだし気にすること無いか(笑)
<浩平の撃墜数、現在2>
後書き
最初に言っておきます。
エヴァファンの人、調子に乗ってゴメンね。てへ♪(笑)
どうも、何故か好評のONEVA第2話あがりましたー♪
うう、ここまで反響があったのは初めてです(涙)
まあ、それはともかく(笑)
浩平好き勝手し過ぎですねー(汗)
それこそエヴァファンからカミソリメール貰ってもおかしくない位………あははー(とりあえず、さゆりん風に笑って誤魔化す)
まあお分かりだと思いますけど、『鈴原ミサキ』。トウジの妹さんです。
とっとと犠牲者になってもらいました(笑)。
これから、犠牲者が増えるかどうかは不明………だって、ONEのキャラも出さなきゃいけないですしね(笑)
まあ、がんばります。
これからの展開に好ご期待(?)
と、終わる前にアンケート。
………シンジもTSさせて、犠牲者に並べるのはいかがなものでしょうか?(笑)
感想、質問、要望、誤字脱字、何でもいいのでメール待ってマス♪
おまけ
『奥義『曲がり角からこんにちわっ♪』!!』
ドゴスッ
「し、使徒、初号機の肘打ちをコアに喰らい、完全に沈黙しました!」
「な、なんでぇ〜!?」
「無様ね」
「………問題ない」