廊下をひたすら歩き、

 はっきり言って仮眠できるほど長いエスカレーターで上り、

 胡散臭いほどひたすら下に潜るエレベーターに乗り、

 怪しげな池(暗くて良く分からないが多分赤色の水)をボートで突っ走り、

 エセ金髪おばさんに連れられてやっと着いた場所は………真っ暗だった。

 

 


 

ONEVA

 

第1話   こーへー、襲来  Bパート

 


 

 

「………しまった」

「どうしたんですか?」

 

 俺の深刻な口調に、少年が尋ねてくる。

 

「俺としたことが………こんな暗闇に連れ込まれるなんて………」

「え? ………ま、まさか、ここ……」

「ああ、すっかり囲まれている………それも武装した黒服のアンちゃん達に……」

「マジですかっ!?」

「そんな訳ないでしょ!!」

「よし、少年。1・2の3で後方にダッシュだ」

「はい」

「人の話を聞きなさい!!」

 

 エセ金髪おばさんは俺と少年の会話に文句をつけてくる。

 

「まったく、冗談も分からないおばさんは嫌だな。なあ、少年」

「ホントですね」

「あ、あんた達………」

 

 肩をすくめて笑いあう俺達に、おばさんは何やら怒りを溜めているご様子だ。

 まあ、からかうのはこれ位にして話を進めることにしよう。

 

カシャン

カッ

 

 部屋にライトが点き、周りを見回せるようになる。

 そして目の前には―――――まるで鬼のような巨大な顔。

 

「「こ、これは………」」

「人の造り出した人型汎用決………」

 

 俺と少年はおばさんの言葉など聞かないで、喚き始めた。

 

「俺達、こいつの生贄にされるのかっ!?」

「き、きっと餌ですよ! 餌!」

 

 叫びながら、ジリジリと後ずさりして行く俺達。

 

「………取って食べたりはしないわ」

 

 頭痛を堪える様にこめかみを指で揉み解しながらおばさん。

 その時、何処からか声がこの大きな部屋の中に響く。

 

「久しぶりだな、シンジ」

 

 俺と少年は声が聞こえてきた方向―――上を見上げる。

 そこにはむさ苦しい髭親父

 

「………父さん」

「な、なにぃ!?」

 

 少年の呟きに俺は驚愕の声を上げる。

 

「ア、アレがお前の親父か!? あんな髭グラサンオモシロドッキリ爆笑親父がか!?」

 

 どう見ても血が繋がってるとは思えんぞ………。

 いや、血どころか遺伝子上の繋がりでさえ一ミリもあると思えん。

 例えて言うなら、人間とウーパルーパぐらいに。

 そうか、義理だな。

 

「ひ、髭……グラサン……」

「くっ……くくっ、オ、オモシロドッキリ……」

 

 おお、なんか知らんが少年とおばさんに受けてるぞ。

 

「赤木博士! そいつは誰だ!」

 

 遠目からでも分かるほど、くっきり青筋を浮かべた少年の髭親父が大声を張り上げる。

 

「シ、シンジ君の友達だそうです………」

 

 金髪おばさんは笑いを堪えながら答えるが、髭を直視することはできずに俯いている。

 

「部外者は出て行け!」

「まあまあ、落ち着けよ。髭親父

「誰が髭親父だ!?」

 

 少年の父親は顔を真っ赤(というよりは血が顔に集まりすぎて既に真っ黒)にして怒鳴る。

 つーか、髭親父自覚しろよ。

 

「じゃあ、こうしよう。オモシロ爆笑親父

「ぐっがっ………」

 

 俺の的確かつナイスな名称に納得したのか、声を詰まらすオモシロ爆笑親父。

 

「納得したんじゃないと思いますけど………」

「ふ………それが大人の仕組みって奴だ。覚えておけ」

「もう訳が分かりませんが………」

 

 なにやら半眼で少年が不満を漏らしてくるが、無視だ。

 

「………出撃」

「おい、お前の親父さん、やっぱ自由業の人だな」

「え、ええ………ここから早く逃げたいです………」

 

 俺達が内緒話(でも、周りに聞こえる程度の声の大きさで)をしていると、金髪おばさんの眉がぴくりと一瞬上に上がる。

 

「あなたたち………何を言ってるの?」

「「え? だって、襲撃って」」

襲撃じゃなくて、出撃よっ!!」

「………なあ、おばさん。言い方を変えても犯罪は犯罪だぞ?

「っっっっ!!!!」

 

 あ〜あ、あんなに顔が真っ赤な上に息まで詰まらしちゃって………熱でもあるみたいだな。

 

「怒りで絶句してるだけだと思いますけど」

「そんな事はどうでもいいんだ、少年」

「よくないわよっ!!」

「で、愉快な髭親父。結局なんなんだ? 『出撃』って」

「………今までのは、からかってただけなんですね」

「八割がたそうだ」

 

 ん?

 おばさんが急に表情を消したぞ?

 嫌な予感がする………。

 

「碇司令………」

「なんだ?」

「このガキ、改造しても宜しいでしょうか?」

「問題ない。というか、むしろやれ

 

 ビンゴだ。

 嬉しくねーっ!

 

「さらばだっ!!」

 

 いきなり後方にダッシュする。

 義務教育9年、高等教育2年の間、登校時全力疾走し続けたこの俺の足をなめるなっ!!

 

ガツッ

ズザー

 

「なっ………」

「ひ、一人で逃げないで下さいよ〜」

「足を掴むなっ! おもくそ地面を顔で滑ったじゃねえかっ!!」

 

 少年に阻まれ、あっさり逃亡失敗。

 くっ……仕方ない、こうなったら………

 

「コイツを生贄に差し出すから、俺の命だけは助けてくれると嬉しいぞ」

「何すんですかーっ!?」

 

 少年の腕を取って、金髪おばさんの前に突き出す。

 

「悪いな。俺の爺さんの遺言で改造だけは受けちゃいけないんだ」

「んなっ!?」

「………この際、シンジ君の方でも良いわね(ニヤリ)」

 

 エセ金髪おばさんが少年の腕を掴む。

 

「と、父さんっ! 助けてっ!」

「問題ない」

「さあ、痛みも悲しみも苦しみもない世界に連れて行ってあげるわ」

「嫌だぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ドゴォォォォォォン

 

 爆発音と同時に部屋が激しく揺れる。

 まさか、違う組の襲撃かっ!?

 

「「しまったっ! 使徒の事を忘れていた(わ)っ!」」

 

 髭と愉快な仲間達が声を揃える。

 どうやら、『使徒』組とやらが攻め込んで来たらしい。

 

「シンジ! これに乗れ!」

 

 髭親父が(すっかり忘れられていた)鬼の様な化け物を指差して、叫ぶ。

 

「なんで僕が、こんな得体の知れない化け物の上に乗らなきゃいけないんだよっ!!」

「いい、碇シンジ君。時間が惜しいから詳しい説明は省くけど、これは『対使徒用』人型汎用決戦兵器よ。あなたがこれに乗らなきゃみんな死ぬわ」

「簡単すぎますっ!」

 

 少年が悲鳴を上げる。

 無理もない………いきなりコレに乗って、『使徒』組とやらと戦えって言われても困るよなぁ。

 

「シンジ、乗るなら早くしろ……でなければ、改造だ!」

「や、やらせていただきます………(泣)」

 

 少年は泣く泣く承諾した。

 

「………これが俺の見た少年の最後の姿だった」

「不吉なナレーションしないで下さいよっ!」

 

 首根っこをエセ金髪おばさんに掴まれて、少年は引きずられていった。

 結局泣いても喚いても運命は変わらないのだった。

 

 

 

 

 

 ふむ、さてどうするかな。

 俺はケージとやらでずっと立ち尽くしていた。

 さっさとここから逃げるのが正しいと思うのだが、逃げた所で行く当てがあるわけではない。

 

ガシャンッ

「う……あ…………」

 

 突然聞こえてきた何かが倒れる音と呻き声。

 俺がそちらに視線を向けると誰かが倒れていた。

 

「どうした? そんな所で寝ると風邪ひくぞ」

「………寝て……ない………」

 

 倒れながら俺の冗談に律儀に返事を返してきたのは、まだ少女と呼ばれるような年代のガキだった。

 青い髪に白い肌、そして赤い瞳。

 確か、アルビノとかいったな。こういうの。

 少女はどうやら怪我をしているらしく、体中に包帯を巻きつけている。

 

「寝てないなら、何してるんだ? 重傷人ごっこか?」

「………ごっこ……じゃない……」

 

 少女は苦しそうにもがきながらも、やっぱり返事を返してくる。

 どこかの傷口が開いたのか、じんわりと血が地面に広がっていく。

 む、確かにごっこじゃなくてマジらしいな。

 

「良かったな」

「はあ………はあ………?」

「俺は女・子供には優しいんだ。病院に連れてってやる」

 

 横たわっていた少女を抱え上げる。いわゆるお姫様抱っこという奴だ。

 服に血が付いてしまうが………まあ、いいだろ。

 

「……あうっ……はあ……あなた……」

 

 少女が俺の腕の中で暴れる。

 何か抗議したいようだ。

 

「すまんな。俺は今、持ち合わせが無いんだ。治療費は自分で払ってくれ」

「ち……ちがう……」

「何!? 助けてもらっておいて、金を払えと言うのか!?」

「……そうじゃない」

「じゃあ、なんだ?」

 

 俺が聞くと、少女はゆっくりと口を開く。

 

「私は………エヴァに乗って使徒を……殲滅しなければいけないから………」

 

 エヴァ? 使徒?

 あ、さっきの鬼ロボか。

 

「ああ、それなら大丈夫。さっきうぐぅな少年が生贄………げふんげふん、もといパイロットになって出撃したから」

「………うぐぅ?」

「そうだ。納得した所で病院行くぞ」

 

 少女は今の説明で本気で納得したのか、暴れずに大人しくなった。

 

「……………」

 

 俺の腕の中にいる少女は何かを言いたげにじーっと俺を見ている。

 ………今まで気付かなかったけど、こいつかなりの美人だな。

 

「なんだ? 俺のクールでビューティホーな顔に惚れたか?」

「………あなた、誰?」

 

 俺のナイスボケはあっさりかわされた。

 

「俺か? 俺様は………オリーハラ=ズココピッチ=浩平15世だ」

「ズココピッチ………変………」

 

 し、信じてる!?

 このガキ、見た目は茜みたいなクールビュティーの癖に、中身は繭だな………。

 何にしても、ズココピッチじゃさすがの俺も嫌だ。

 

「冗談だ。本当の名は、折原浩平。美男子星から来た美男子王子だからして、浩平様と呼ぶがいいぞ」

「………浩平……様?」

 

 ぐあ………なんでこのガキこんなに素直なんだ?

 不覚にも萌えてしまったぞ………。

 

「それより、人の名前を聞いたくせに自分は名乗らないのか?」

「………綾波レイ、ファーストチルドレン」

「綾波=レイ=ファースト=チルドレン? お前も十分変な名前だな。妙に長いし」

「………違う。名前は綾波レイ。ファーストチルドレンは………」

「あー、レイ。説明長そうだし、いいわ」

 

 俺がそう言うと、レイは目を少しだけ見開いて驚いた表情をする。

 が、すぐ元の無表情に戻る。

 

「そう………」

「………」

「………」

 

 結局会話を続ける事ができず、沈黙のまま俺は病院に向けて歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、所で病院はどこだ?」

「…………」

 

 呆れられてしまった。

 

 

 

 

 

続く?


後書き

 

 どうも、ランバードです。

 

 こんなお馬鹿なエヴァとONEのクロスオーバーSSを書いた理由ですが………。

 何となく書きたかったから

 に、他なりません(笑)

 

 さてさて、このSSについて少し説明させてもらうと、ONEのいわゆるオールエンド後ですね。

 ちなみにオールというのは伊達ではなく、メインヒロインはもちろんサブヒロイン(詩子、雪見部長、その他多数)全員とイタしちゃってます(爆笑)

 そして原作通り『永遠の世界』に消えてしまいますが、もちろん絆のはともかくはたっぷりあるので戻ってこられるはずでした。

 が、何をどう間違えたのかエヴァ世界に迷い込んだ―――というのがこのSSの全貌(?)です。

 

 浩平以外のONEキャラですが、一応出て来る予定です。

 どうやってエヴァ世界に来るかというと―――永遠の世界からONE世界に絆を頼りに戻ってこれるなら、ONE世界からエヴァ世界に浩平との絆で逆に引き寄せられてもおかしくはない―――とまあ、こんな感じの理屈付けです(笑)

 ………理屈というよりは屁理屈ですけどね。

 

 最後にレイと浩平が会ってましたが………これだけは言わせて貰いましょう。

 障害者喰いの浩平をなめるな!(笑)

 え? 高3(しかも卒業間近)の浩平と中2のレイじゃ年が離れ過ぎてる?

 大丈夫、ONE本編で○学生の繭に手を出してる位ですし(笑)

 

 感想、質問、要望、誤字脱字に罵詈雑言、なんでもいいのでメール待ってマス。

 ………カミソリメールだけは勘弁して下さいね(汗)

 


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