前だけを…

 

第四話   雨、逃げ出した後


 

>シンジ

 暗い…………。

 何も………見えない………。

ぽっ

 暗闇に中に小さな男の子が見える。

 あれは………僕だ………。

「母さん、何で居なくなっちゃったんだよっ!」

「父さん、何故、僕を捨てたの!?」

「僕、良い子にしてるから………だから………僕に優しくしてよっ!」

「誰か………僕に優しくしてよっ!!」

 僕の心の叫び。

 いつも、ずっと叫んでいた僕の願い。

 でも、今は知っている。

 母さんが居なくなった理由を。

 父さんが僕を捨てた理由を。

 そして、優しくしてくれる…………優しくしたい、人達を。

 もう僕は、独りじゃない…………。

 

 

 

 目を開ける、まず見えたのは白い天井だった。

「……………」

 ゆっくり辺りを見まわす。僕はどうやら、病室のベットに寝ているようだ。

「……………ミユウ?」

 ベットの横の椅子でミユウが眠っていた。

 上半身を起こし、周りをよく見るとミユウだけではなく、サキと綾波もいた。

 病室にあるもう一つのベットに座り、寄り添うようにサキと綾波は眠っている。

(そっか僕、使徒を倒した後………気持ち悪いのが酷くなって………)

「三人とも、僕が寝てる間………付き添っててくれたんだ」

「ん………シンジ君?」

 僕の呟きに反応して目をゆっくりとミユウが開けた。

 ミユウはぼーっと僕の顔を見ている。

「…………って、シンジ君!?大丈夫?痛い所無い?気持ち悪くない?」

「大丈夫だよ」

 ミユウの目にじわーっと涙がたまる。

「良かった………」

ぴとっ

 ミユウは僕の胸におでこをくっつけて、顔を伏せる。

「ミユウ…………ごめん、心配かけちゃって……」

「いい。シンジ君、無事だったから………」

(ああっ!!可愛い!!抱きしめたい!!…………いいよな、抱きしめても………こういう場合は)

 僕はそろそろと背中に手を回そうとした。

「ああ〜っ!?ミユ、ずるい〜〜〜!!」

 サキが目を覚まし、抱き合おうとしている僕達に非難の声を上げる。

「わあっ!?」

 僕は慌てて手を引っ込める。

「ボクのおにいちゃんだもん!ボクがくっつくの!!」

「サキちゃんのじゃなーいっ!!」

「ボクのだもんボクのだもんボクのだもんボクのだもんボクのだもん ボクのだも〜〜〜〜んっ!!!!!!」

「違う違う違う違う違あ〜〜〜〜うっ!!!!!!」

 ほとんど小学生のような言い合いを呆然と眺めていると、いつの間に 起きたのか(これだけ騒げば普通起きる)綾波が僕のそばに来た。

「碇君……………」

「綾波、僕は大丈夫だよ」

 綾波が僕のことを心配してくれているのがなんとなく分かる。

「そう………、無理しないで」

「ありがとう、綾波………」

「「レイーー!!ドサクサにまぎれてーーっ!!」」

「……何?」

 この騒ぎはしばらく治まらなかった。

 

 

 

>赤木博士の研究室

「シンジ君、意識が戻ったそうよ。肉体的、精神的共に異常なし」

 リツコがコーヒーをすすりながら目の前に座るミサトにそう言った。

「ほんと?良かった〜。………結局、何が原因だったの?」

「………これを見て」

「何これ?」

 リツコがミサトに渡した書類には折れ線グラフが書かれている。

「シンジ君のシンクロ率よ、今回の戦闘中のね………」

「戦闘中のシンクロ率!?」

 ミサトはグラフを凝視する。

「ここを見て。使徒に突撃した時のシンクロ率………」

 リツコの指した部分は折れ線グラフが急激に上昇している。

「異物を二つも入れていたのに150%を突破しているわ」

「ひゃ、150%!?」

「そう、一瞬だけど確かに156,4%になっているわ。………シンジ君が 倒れたのは、異物を入れたまま過剰シンクロしたのに原因があると思われるわ」

「………何故、シンちゃんはこんなにも高いシンクロ率がでるの?」

「さあ、まったくの不明よ………。それに……………」

「それに?」

「シンジ君のあの動き………常人の動きじゃないわ」

「あの動きって………戦闘中の?確かにムチを切り払ったのは凄かったけど ………常人じゃないっていうのはオーバーなんじゃない?」

「ミサト、あなた、時速530kmで飛んでくるムチを短いナイフで切り払える?」

「…………………マジ?あのムチ、そんなに速かったの?」

「はっきり言って切り払うどころか、視認するのも難しいでしょうね………」

コポコポ

リツコはコーヒーを飲み終わり、次のもう一杯を入れる。

「シンジ君………彼は……一体何者なのかしらね……」

「な、何者って………、第一シンクロ率が150%オーバーなんて常識はずれの 数字だったんだから、それぐらい出来るんじゃないの?」

「シンクロ率がいくら上がっても搭乗者の反射神経が上がるなんて ありえないわ………。考えられるのはシンジ君が訓練の時に手を抜いていたか…… (もしくは初号機の中の『彼女』が手助けしたか………ね)」

ゴクン

 リツコはゆっくりとコーヒーを飲み下し、話題を変えることにした。

「………不明といえば、今回の使徒、劣化しなかったわ」

「は?」

「前回の使徒と違って全くといって良いほど劣化しなかったのよ」

「………良い事なんじゃないの?せっかくのサンプルでしょ?」

「………原因が分かっていないわ」

 ミサトは呆れた顔でリツコを見る。

「まったく、分からない事だらけじゃない」

「………悔しいけど、その通りよ。現在、分かっている事なんて皆無に等しいわ」

 リツコはコーヒーカップを持つ手を震わせて呟いた。

「じゃ、じゃあ、あたしはシンちゃんの所に行って来ますか」

 ミサトは親友の機嫌がこれ以上悪くならない内に退散する事にした。

 

 

 

>シンジ

「シンちゃん、入るわよ〜………………なにしてるの?」

 ミサトさんは入ってくるなり怪訝そうな声を出す……………まあ、当たり前だけど。

「……………ミサトさん、あれは無視してください」

「ひゆ、ひょろひょろへんかひなんひゃないの!?」

「しゃきひゃんこそ、なひだくんでりゅひゃなひ!」

 ミユウとサキはお互いの頬を両手で限界まで引っ張り合っていた。

 その状態でさらに口げんかまでしているその姿は、 とても人に見せられるものではなかった。

 ちなみに二人の言葉を通訳すると、

『ミユ、そろそろ限界なんじゃないの!?』

『サキちゃんこそ、涙ぐんでるじゃない!』

 となる。

「え、ええ、そうするわ………」

 ミサトさんは表情をかなり引きつらせている。

「それで…………何か用ですか?」

「ま……………今回の戦闘の反省会ね」

 冗談交じりの口調でそう言うと、ミサトさんは真面目な表情になる。

「シンジ君、何故あの時撤退命令を無視したの?」

「すみません……………、トウジ達を入れた影響で動きが鈍って 撤退できると思えませんでした」

「エヴァが負ければ、人類は死滅するのよ。どっちにしてもあの場合、 そう思ったんならこっちにそれを伝えて欲しかったわ。そうすれば、 こっちもある程度の作戦は………」

「……………立てられたんですか、あの状況で。あんなピンチになる前に ちゃんとした作戦も立てられなかったのに」

「……………そうね、でも、あなたはあたしの命令に従う義務があるわ」

「その結果負けたとしても、ですか?」

 ほとんど、売り言葉に買い言葉だ。どんどん空気が重くなっていく。

「葛城一尉」

 綾波が突然口を開く。

「何、レイ………?」

「パイロットには状況判断によってある程度の行動が許されているはずです」

「命令を無視して言いという事にはならないわ」

「あの時の命令は無効です」

「………何を言っているの?」

「あの時、あなたは赤木博士と口論しており、戦況を正確に把握してはいませんでした。」

「そ、そんなことないわっ!!」

「碇君は一番有効だと思われる行動を取ったに過ぎません。 それにあの時碇君に、作戦本部と相談できる余裕はとてもありませんでした」

 綾波の珍しく饒舌な言葉に、ミサトさんは表情を緩め両手を上げた。

「あ〜あ、降参よ。確かにあの時はあたしが間違ってたわ」

 きつかった空気が一気に軽くなる。

「ミサトさん……………失礼な事を言って、すみません」

「こっちもちょっとムキになっちゃって……………ごめんね、シンちゃん。 それにしてもレイがシンちゃんをかばうとはね〜、毒気抜かれちゃったわよ」

 ミサトさんは肩をすくめ、綾波に視線を向ける。

「碇君は……………家族だから」

 綾波は頬をほんの少し赤くしてそう呟いた。

「綾波……………」

「シンちゃん。ミユウちゃんだけじゃなくて、レイにまで手を出してたの?」

「な、何言ってるんですか!?家族って綾波も言ってるでしょう!?」

「慌てる所が怪しいのよね〜」

 ミサトさんはにやにや笑いを炸裂させる。にやにやという擬音まで聞こえてきそうだ。

「ま、いいわ。今日はもう帰りましょ。………………とその前にあれ何とかしないとね」

 ミサトさんの視線の先にはまだ頬を引っ張り合っているミユウとサキがいた。

「ひょ、ひょろひょろ、ひぷあっふ?しゃきひゃん(そ、そろそろ、ギブアップ?サキちゃん)」

「あ、あだひゃもん!(ま、まだだもん!)」

 どうやら、さっきの僕達のやりとりすら聞こえてなかったようだ。

「はあ……………」

 

 

 

 次の日。

「シンジ、すまんっ!わしを殴ってくれっ!」

 トウジはそう言うなり土下座した。

 朝、学校に来て教室に入るなり、待ち構えていたトウジが目の前にいる。

「………え?」

「この前妹を助けてもろうたのに、今度はわしが邪魔してもうた! 遠慮はいらん。わしをどついてくれっ!」

(ああ、昨日の戦闘のことか…………)

 実はトウジの事はすっかり忘れていた。

「………いいよ、そんな事」

「わいの気がすまへんのやっ!シンジ、頼むっ!」

「こういう恥ずかしい奴なんだよ……。 な、碇、一発殴ってやってくれよ」

 メガネをかけたクラスメート(確か、ケンスケっていう名前のはずだ) がそう隣で言ってくる。

(………君も邪魔した一人じゃなかったけ?他人事のようにしてるけど。 ………別にいいけどね、気にしてないし)

「じゃあ、一発だけ」

「ああ、手加減は抜きやでぇっ!」

 トウジは立ち上がり、ぐっと歯を食いしばる。

(………………よく考えたら、昨日サキを泣かしてくれたんだっけ)

「………いくよ」

「いつでも来いっ!」

「はあっ!」

ドバキィィィッ

「ぐぼへっ!?」

どんがらがっしゃーんっ

 僕の手加減一切抜きのストレート(第三に来てからネルフで戦闘訓練を受けている) はトウジの左頬にばっちり入り、トウジは弧を描いて宙をとび机に突っ込んだ。

「ナ、ナイスパンチや………」

 トウジはそう言い残すと気絶した。

 

 

 

>ミユウ

(シ、シンジ君………、怒ると怖いんだね………)

 

 

 

>サキ

 昼休み、ボク達は屋上でお昼御飯を食べていた。

「が〜はっはっはっ!シンジ、なかなかやるやないか!」

 トージっていう、じゃーじな人は昼休みには復活していた。

「トウジ、結構丈夫だね………」

 おにいちゃんは呆れた顔をしてみている。

「それより、シンジ!その弁当はもしかして、こっちの従妹が作ったやつか?」

 トージはおにいちゃんの食べている弁当をうらやましそうに見ながらそう言う。 ちなみにトージはパンだけ。

「え?違うよ。これは僕が作ったんだ」

「ボクのもおにいちゃんが作ってくれたんだよ〜♪」

「男のクセに料理なんぞしとるのか!?」

「おかしいかな?」

「当たり前や!男はもっと………こう………ずっしり構えてればええんや!」

「そういえば、碇君と碇さんって一緒に住んでいるんだっけ?」

 トージの横に座っているヒカリ(クラスのいーんちょというのをやっているらしい)が トージを無視して聞いてきた。

「そうだよ♪」

「…………なあ、所で碇と如月さんって知り合いなのか?」

 メガネをかけた男の子(名前知らない)がパンをかじりながらおにいちゃんに 聞いている。

「うん、前の中学で同じクラスだったんだよ」

「そっちはそれで分かるけど………なんで綾波とも知り合いなんだ?」

 メガネな人はレイの方をちらりと見た。レイは黙々とおにいちゃんの作った お弁当を食べている(野菜料理ばっか………あきないのかな?)

「綾波もエヴァのパイロットなんだよ」

「「「ええ〜〜〜〜っ!?」」」

 トージとヒカリとメガネな人が同時に声を上げる。

「なるほどな……………、それで綾波と一緒に飯を食べれるほど仲が良いのか。 きっと、一緒に死線を潜り抜けた二人には愛情が芽生えて………」

「な、何言ってるんだよ!?ケンスケ!!」

 おにいちゃんが真っ赤な顔をして叫ぶ。

(そーか…………このメガネな人、ケンスケっていうんだ………。どーでもいいけど)

「冗談だよ、冗談。それにしてもエヴァってカッコイイよな〜。なあ、シンジ! 俺もパイロットになれないかな?」

「………やめといた方が良いと思うけど。そんなに良い物じゃないよ」

「どうしてだよ?巨大ロボットを操縦できるなんて漢の夢じゃないか!」

 ケンスケがなんか力説してる。

キーンコーンカーンコーン

「あ、チャイムだ。シンジ君、戻ろう」

「うん。ほら、サキ。ちゃんと弁当箱は布に包むんだよ」

「は〜い♪」

「シンジ、帰りゲーセン寄っていかへんか?」

「う〜ん……………うん、行くよ」

「おにいちゃん、ボクも行きた〜い!」

「トウジ、良い?」

「別に構へんで」

(げーせんってなんだろう楽しみだな〜♪)

 

 

 

>ミユウ

「シンジ君、ゲームってやったことある?」

「いや………実はあんまり」

 放課後、私達(私とシンジ君とサキちゃんとレイ)は鈴原君と相田君に 連れられて近くのゲームセンターに来ていた。 が、なんの知識もない私達は立ち尽くしているだけだった。

「ねえねえねえねえねえねえねえ、おにいちゃん!!あれ何かな? こっちの光ってるヤツは!?」

 訂正。サキちゃんは走りまわっていた。

「なんや、シンジ。ゲーセン来た事なかったんか?」

「うん」

「そーか………ん〜、なにがええやろか?」

「トウジ、最初にあれなんかいいんじゃないか?」

 相田君の指した物は私でも分かる………パンチングマシーンだった。

「おおっ!確かに、シンジやったらええ得点がでるで!」

「じゃあ、やってみようかな………」

チャリン

 シンジ君はパンチングマシーンに百円を入れる。

「ちなみに前やった時ワイは108キロやったぞ」

「シンジ君、がんばって♪」

「がんばれ、おにいちゃん………それで、これ、何なの?」

「サキ、これはこの機械にパンチして威力を測るゲームだよ」

「へ〜え♪」

「よし、いくよ…………はっ!」

ばしぃっ!

『109kg』

「なんや、ワイとほとんど変わらないやないか。もっとデカイ数字がでると 思ったんだがのう」

「けど、体重はトウジより碇の方がどう考えても軽いだろ?大したもんだよ。 よっ、さすがエヴァパイロット!」

(鈴原君を殴った時の方が全然威力あったような気が………)

「そうだ、ミユウやってみなよ」

 シンジ君は私に振り向く。

「え、私?」

「前に格闘技やってたっていってたよね。やってみてよ」

「如月さん、格闘技やってたのか?……………ってちょっと待てぇっ!!」

 いきなり相田君がシンジ君を睨みつける。

「碇っ!お前、今如月さんの事を呼び捨てで呼んだなっ!?」

「あっ……………」

 シンジ君がしまったとばかりに口を抑える。

「まさか、二人は付き合ってたのか!?そうか、それで如月さんは前の中学から 一緒に付いてきたんだな!!」

「ち、ちがっ「いや〜、ばれちゃったか〜♪」

 シンジ君の否定の言葉を私の言葉が遮った。

(相田君に知らせれば学校中に知れ渡るだろうから、これで私とシンジ君は クラス公認の仲〜♪他の女子もこれで手を出さないよね〜♪)

「ミ、ミユウ何を「違うもんっ!おにいちゃんはボクのだもん!」

 シンジ君の言葉を今度はサキちゃんが遮った。

「「何〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」」

「シンジッ!!お前、如月さんだけやのうて、碇さんにまで………」

「ち、違うっ!!」

「「詳しく聞かせてもらう(で、シンジ!)(ぞ、碇!)」」

「ご、誤解だ〜〜〜〜!!!!」

 

 

 

 シンジ君の必死の説明は30分続いた。

「………というわけで、ミユウともサキともなんでもないよ!!」

「「わかった」」

 二人のそろえた声にシンジ君は肩を下ろす。

「お前が二股かけとるのはようわかった」

「な、なんでそうなるんだよ!?」

「そうそ、シンジ君。早く、私を選んでね♪」

「おにいちゃん、おにいちゃんはボクのだよね♪」

「ひ、酷いよ、二人とも…………」

 シンジ君は情けない顔をして私とサキちゃんを見てくる。

(あはは、さすがにこれ以上は可哀相か………)

「じゃ、私、このゲームやってみるね。」

チャリン

 私は筐体に百円玉を入れた。

「はあっ!」

バシィィィィン!

『142kg』

「ま、こんなもんかな」

「な…………如月さん、それ………」

「私は蹴りの方が主だから、そっちだったら二倍近くの得点が出たのに ………残念だな〜」

 

 

 

>シンジ

「おい、シンジ。お前、早いとこ二股やめへんと殺されるやないんか?」

「だから、違うって言ってるのに………」

(でも、怒らせたら殺されるのは確かだな………くわばらくわばら)

 以前食らった踵落としの威力を思い出し、僕は身震いをした。

「ねえねえ、ボクもやってみて良い?」

「サキもやりたいの?いいよ、ほら」

チャリン

 僕は百円を入れ、サキを筐体の前に立たせる。

「碇さんにはちょっときついんじゃないのか?」

 確かにミユウより頭一つほど小さいサキにはちょっときついかもしれない。

「サキ、あまり無理しちゃダメだよ」

「うん……………えいっ!」

ドコォォォォォォォンッ

 サキのちょっと小突いただけのようなパンチはパンチングマシーンの大きな筐体をふっとばした。 筐体は完全にバラバラになっている。

「な………、い、一体何が………!?」

 呆然と壊れたパンチングマシーンを見つめる僕達。綾波ですら目を見開いて見ている。

「と、とりあえず逃げろっ!」

 ケンスケの叫びと共に僕達は我に帰り、ゲームセンターから逃げ出した。

 

 

 

「はあ、はあ、はあ、はあ、何をしたんだよ、サキ」

 僕達は近くの公園まで全力疾走で逃げてきた。

「ただ、パンチしただけだよ?」

「ただパンチしただけ…………?」

「碇さん…………力、強いんやな…………」

「そういう次元なのかな…………?」

(さすがは元使徒、ってわけか………?)

「………おい、碇」

「な、何?」

「お前、本気で二股やめないと死ぬぞ……………」

「だから違うって何度も言ってるだろ…………」

 

 

 

>ミユウ

ぺたぺた

 私は自分の頬を触りながら、

(よく、私のホッペ無事だったな………(汗))

 サキちゃんとケンカして頬の引っ張り合いをした事を思い出していた。

 

 

 


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