ガタンゴトンガタンゴトン

 列車は揺れていた。

 その列車に乗っているのは一人の眠っている少年だけだった。

 数瞬前までは。

 その少年の隣に寄り添うようにもう一人の人物が虚空から現れる。

 そしてその人物も少年の肩に寄りかかったまま眠りに着いた。

 


 

『ボク』達二人の協奏曲
                        CONCERTO

 

第壱話   歴史を狂わせる、ボクと僕の出会い

 


 

ウーーーーーーーーー、ウーーーーーーーーー

「わっ!? なんだっ!?」

 少年、碇シンジは突然大音量で鳴り響いた警報に目を覚ました。

 シンジはまだ眠い目を何度も瞬かせ、周りの風景を見ようと努力する。

(電車の中………? ああ、そっか……父さんの所に行くんだっけ………)

 まだ多少寝ぼけながらも、シンジは今の自分の状況を思い出す。

「………あれ?」

 シンジはふと肩に温かい重量感を感じ、隣を見る。

「誰だ?」

 そこにいたのは、青と白を基調としたレオタードのような物を着た人だった。

 そして、顔を見てシンジは絶句する。

「……………んん、ここは?」

 眠っていたその人物も意識を覚醒し――――シンジと目が合った。

 しばらく二人はお互いの顔をジロジロと眺め、同時に叫んだ。

「「何でボク(僕)がもう一人いるのっ!?」」

 

 

 

 そのころ、某組織作戦部長、葛城ミサトは自分の愛車の青いルノーをかっ飛ばしていた。

「ああ、もうっ!! よりにもよって何でこんな時に使徒が来るのよっ!!  人の迷惑も考えなさいよねっ!!」

 かなり無茶苦茶な事を叫びながらハンドルを握っている。

「着いたっ!!」

 待ち合わせの駅の前で車体を横滑りさせながらブレーキを踏み込む。

キキィィィィィィィ

ガシャーーーーン

 後方で何かがぶつかった音がしたが気にしない。

「って、シンジ君は何処よっ!?」

 あたりを見回しても人っ子一人いない。

 まだ二人のシンジが列車で固まっているのに気付かなかったミサトは車を再スタートさせた。

「シンジ君、どこよ〜〜〜〜〜!?」

 

 

 

 二人のシンジは混乱していた。

(なんで、僕がレオタード着て僕の前にいるんだろう?)

(こんなの聞いてないよっ! 綾波ぃ!!)

 もう、読者の皆様にはお判りだろう。

 この二人は2015年現在のシンジと未来からきたシンジだったりする。

「あ、あの………今、何年の何月何日か分かる?」

 プラグスーツを着たシンジが学生服を着たシンジに質問する。

「へ? えっと、2015年の4月29日だけど………」

(4月29日………ボクが第三新東京市に来た日……。そうか………過去に戻れば、 そこには過去の『ボク』がいるって事か………)

「ね、ねえ………」

 学生服を着たシンジが何故か顔を赤くしながら、もう一人のシンジに声を掛ける。

「君さ………これ、着た方が良いよ」

 そう言いながら自分が持ってきた鞄からTシャツを出して差し出す。

「………何で?」

 プラグスーツを着た方のシンジが不思議そうに首を傾げる。

「だ、だって、その………」

 何故かどもるシンジ(学生服)。

「その………君、女の子だし………」

「は?」

「その、体の線とか出ちゃってるし………」

 シンジ(プラグスーツ)が自分の格好を見下ろすと、見慣れた青のプラグスーツに ―――――見慣れない胸の膨らみがあった。

「な、なんだよっこれぇ!?」

 

 

 

「正体不明の物体、海面に姿を表しました!」

 どこぞの某地下組織は現在てんてこ舞いだった。

「物体を映像で確認! メインモニターに回します!」

 オペレーターの報告と同時にモニターに、『正体不明の物体』とやらが映し出される。

 首をちょん切って、胸の部分に仮面を括り付けた巨大な人型。簡単に要約すればそんなところだ。

「………15年ぶりだな」

「ああ…間違いない。使徒だ」

 

 

 

 さて、一方シンジ二人は―――

「君、名前なんていうの?」

 まだ列車の中でのんきに自己紹介などをしていたりする。

「え? ………碇………シ……シオリ」

 シンジと名乗るわけにもいかず、苦しまぎれにシオリと名乗る。

 冷静に考えれば『碇』というのもマズイのだがそこまで気はまわらない。

「碇シオリ? へえ〜、僕は碇シンジ。もしかして、僕達、生き別れの兄妹とかなのかな?」

「さ、さあ………?」

 プラグスーツの上に借りたTシャツを着たシンジ(以後シオリ)は曖昧な言葉しか返せない。

 冷静に戻れたシンジと違い、シオリの頭の中はパニック&ピヨピヨ状態だ。

 なぜなら胸の膨らみとは逆に、いつもならプラグスーツを着ていれば必ずあるはずの股間の膨らみが無いからだ。

(どうして、ボクが女の子に!? 何故どうしてwhy!? 綾波、君は何を考えてるんだよぉぉぉぉ!!)

ドガァァァァァァン

「「!?」」

 窓の外から爆発音が聞こえ、流石にシオリも正気に戻る。

「何だよ、あれ………?」

 シンジは窓の外を見て呆然とする。

 使徒がミサイル攻撃を物ともせず山の間から姿を表している所が見える。

「第三使徒………」

 シオリもシンジの隣で窓の外を見て呟く。

「第三………しと? ………あれってここの名物か何か?」

ごんっ

ビキッ

「どうして、そうなるんだよっ!!」

 シオリは思わずヘッドバットで窓にヒビを入れてから、シンジに向かって叫ぶ。

「だって『第三しと』って言うんでしょ、あれ。ほら、第三新東京饅頭とか、 第三煎餅とか、第三弁当とかって良くあるから。 あ、第三キーホルダーなんていかにもありそうだよね」

「その『第三』じゃな〜〜いっ!! 第一、あれの何処が名物に見えるんだよっ!?」

 あまりにボケたことを言うシンジにシオリは使徒をどびしぃっと指差しながら絶叫する。

「確かにそう言われれば名物には見えないけど………それより、額大丈夫? 赤くなってるよ?」

「え? ………だ、大丈夫だよ」

スッ

 シンジはシオリの赤くなったオデコに手を伸ばす。

「う〜ん………赤くなってるだけで、たんこぶも出来てないみたいだから大丈夫かな?」

「あの………」

「わ、わわっ!………ご、ごめん!」

 シオリの遠慮気味な声にシンジは慌てて手を離す。そして、お互いに顔を赤くして俯いてしまう。

ドゴォォォォォォン

 列車の近くに流れミサイルが着弾して、爆発を起こす。

 二人はその光景に、間抜けな会話を中断して顔を見合わせる。

「「……………に、逃げよう!!」」

 やっと、自分達の命がでんじゃらすがけっぷち な事に気付いた二人は列車から慌てて逃げ出した。

 

 

 

 某地下組織―――

「た、大変です!使徒の前方1キロの地点に自転車に乗っている人間がいます!  しかも、2ケツです!」

「な、何だとぉ!?」

 ミサイル攻撃が全く効果を上げないので切り札のN2爆雷を撃とうとしていた 戦略自衛隊のお偉いさんは思わず立ち上がる。

「何処の馬鹿だっ!? 碇君!! 民間人の非難は済んでいる筈じゃないのかね!?」

「問題ありません」

 某地下組織の司令、碇ゲンドウは眼鏡をくいっと指で押し上げながら言い放つ。

「使徒を倒すのが最優先です」

 言外に『民間人の一人や二人気にすんな、バーロォ!』という意味が込められている。

「し、しかしだね………」

「こ、これはっ!?」

 オペレーターの一人(眼鏡)が手元の端末に表示されたデータを見て顔を引きつらせる。

「どうしたの、日向君!?」

 彼の後ろに立っていた白衣を着たの女性、赤木リツコが問い掛ける。

「自転車に乗っている人物は、葛城一尉が迎えにいったはずのサ、サードチルドレンです!!」

「な、なんですって!?」

「なんだと!?」

 さすがにこの言葉には、冷静沈着、マッドなネコ博士のリツコと、 冷静冷徹、鬼畜ド外道のゲンドウも声を上げる。

「早く、葛城一尉を呼び出しなさい!!」

 リツコは慌てて部下に命令した。

(………葛城二尉、六ヶ月の減棒)

 ゲンドウの心の中でミサトの降格&減棒は決定された。

 

 

 

「シンジ! う、後ろにもう来てるよぉぉぉぉぉ!!」

「わ、わかってるよぉぉぉぉ!!」

 シンジはかっぱらった自転車(二人の手際が妙に良かったのは秘密だ)の後部座席にシオリを乗せ、必死に漕いでいた。 もう文字どうり必死に漕いでいた。

 しかし、相手のスピードには敵わない。大きさが違いすぎるのだ。

 第三使徒サキエルはそんな二人に『おにいちゃ〜ん♪』とでも言ってるかのごとく一直線に向かってくる。

ドガァァァァァン

「わあっ!?」

 飛んできたミサイルの爆発による振動で危うくシオリは落ちそうになる。

「しっかり捕まってて、シオリ!」

 今まで情けない人生を歩んできたシンジだが、そこはやっぱり男の子。

 シオリに力強くそう言うと(何気に呼び捨て(笑))更に自転車のスピードを上げる。

「う、うん」

 シンジの思わぬ男らしさ(まるで『自分』じゃ無い様な) にシオリはほんの少し顔を赤らめ、素直にシンジの背中にしがみついた。

ギュッ

むにゅ♪

「わぁぁぁぁぁ!」

 シオリがシンジの腰に手を回ししっかり掴まった事によって、シンジは背中に シオリの二つの柔らかい感触を感じて危うくこけそうになる。

「シ、シンジ、しっかりしてよっ!」

「う、うん」

 その様子を見ていた(かどうかは知らないが)サキエルは『む〜、ボクにも構ってよ〜』 と言わんばかりに二人の元へ空中で引っつかんだ戦闘機をぶん投げる。

ドガァァァァァァン

 直撃こそしなかったが、すぐ近くに落下し爆風と破片がチャリンコ二人組に襲い掛かる。

「「うわあああああああっ!!」」

キィィィィィィィィィ

 が、間一髪の所でその二人の盾となる様に、青い車が急停止した。

「碇シンジ君ねっ!!早く乗って!!」

 運転席からシンジの名を呼んだのは、自分も知らない内に降格&減棒された (えびちゅが減った)悲劇の美女、葛城ミサト二尉その人である。

 もちろん、今のこれが間に会っていなかったら懲戒免職どころか命がなかったのは言うまでも無い。

「「は、はいっ!」」

 シンジ達はミサトの言葉に従い、後部座席に乗り込んだ。

 ミサトはシンジ達が乗り込んだのを確認すると、鞭打ちになりそうなほどの勢いで発進した。

「葛城ミサトさんですよね?」

「そうよ。遅れて御免なさいね。ちょっち道が混んでたもんだから。」

 白々しい言い訳を吐くミサト。

 混んでたどころか、非常事態宣言のせいで人っ子一人いなかった。

 もちろん、シンジはその事に気付いてはいるが呆れた顔をして何も言わない。

 シオリの方はそんな事を言う余裕すらなく、今にも泣き出しそうな表情でミサトを見つめていた。

(ミサトさん、ミサトさん、ミサトさん!!)

 シオリは湧き上がってくる想いで、今にも叫びだしそうだった。

 そんな様子に気付かず、ミサトはちらりとバックミラーでシンジたちの顔を見―――

キュィィィィィィィィ

 ハンドル操作を誤って、車を蛇行運転させる。

「な、なんでシンジ君が二人いるのよぉ!? 細胞分裂でもしたの!?」

 シンジが二人いるという事実に、ミサトはいつもどうりのひたすら軽い上に無神経な口を動かす。

「「ボク(僕)達はアメーバじゃありませんっ!!」」

 両サイドからのステレオ放送ツッコミに、ミサトは一瞬くらっと来たが何とか 持ちこたえて質問を続ける。

「そ、そんなことはどうでもいいのよ! 本当の碇シンジ君はどっち?」

「碇シンジは僕ですけど………」

 恐る恐るといった感じで学生服姿のシンジが手を上げる。

「じゃあ、そっちの子は?」

「ボクは………その………碇シオリです」

「碇……シオリ?」

 怪訝そうな顔をして、ミサトはシオリを見つめる(といっても、バックミラー越しだが)。

「僕の妹………だと思うんですけど

「妹?」

 シンジの後半の呟きはミサトには聞こえなかった。

 シンジに妹がいない事は報告書に読めば分かるはずなのだが、 もちろんミサトは読んでいない。

 ゆえにミサトはあっさり納得した。

「ふ〜ん、そうなの。………もしかして双子?」

「そうです………多分

 シオリが自分の妹だと言っている内に、シンジの考えはだんだんと疑惑から確信へと昇華していった。

 

(そうか、そうだったのか父さん!

 僕を今更呼び出したのはシオリと会わせようとしたんだね!

 シオリは僕と同じように列車に乗っていた、つまりシオリも僕と同じように 父さんに呼び出された。

 きっと父さんはシオリを僕と同じように捨てたんだ!!)

 

 シンジの想像は膨れ上がっていく。

 

(けどなんで今更、会わせようとしたんだろう………?

 もしかして、他に何か用件がある………?

 ……………はっ、そうか!!

 なんで父さんじゃなくてこんな女の人が迎えに来るか不思議だったけど、そう言うことだったんだね!!)

 

 シンジは運転しているミサトを凄い形相で睨み付ける。

 

(この人と再婚するつもりなんだね!!

 だからこれを機に、僕たちを呼びつけて仲を修復しようとしてるわけかっ!!

 僕達を犬や猫みたいに捨てて置いて幸せになろうだなんて虫が良すぎるよ、父さん!)

 

 ミサトが聞いたら殺されそうな考えをしていると、隣にいるシオリがその柔らかい手でぎゅっと優しくシンジの手を握った。

「シンジ、大丈夫?」

 シオリはシンジがそんなぶっ飛んだ想像をしてるとは露知らず、心配そうにシンジを見つめる。

 かつて自分が父親に会いに行った時の気持ちを思い出し、急に黙り込んだシンジを悩んでいると勘違いしていた。

ずきゅーん

 心配そうな表情で上目遣いに顔を覗き込んでくるその仕草は、シンジの心にヘヴィ級のストレートを叩き込んだ。

「シオリ!!」

「な、何?」

 いきなり、大きな声を上げてシンジはシオリの両手を握る。

「君は僕が絶対に守るからね!!」

「………へ?」

 シオリはポカンと口を開け、間抜けな表情で呟いた。

 

 

 

「葛城二尉、遅いわよ」

「ゴミンゴミン……………って葛城尉?」

「ついさっき、あなたの降格が決定したわ。半年の減棒と共にね」

 やっとこさネルフ………もとい、某地下組織に着いたミサトを待っていたのはリツコの非情な言葉だった。

「な、なんでっ!? シンジ君はこの通り無事に連れてきたわよ! しかもダブルで!」

「貴重なチルドレンを無用な危険に晒したのはあなたの遅刻の所為でしょ。当然の………ダブル?」

 リツコがミサトの後ろに視線を向けるとそこには楽しそうに談笑する二人のサードチルドレン。

「………ミサト、アレは何?」

「んっんっん〜〜〜♪ な〜んだ、リツコ知らなかったの〜〜♪」

 ミサトはリツコの反応に上機嫌だ。

 どうやら、同じ書類未読仲間だと思ったらしい。

「まったくね〜、人には散々読めとか言ってたくせに自分だって目を通してないじゃない♪」

「ミサト、何を言っているの?」

「ノ〜ンノンノン! 話逸らそうとしてもダメよ〜ん♪」

 リツコはこめかみをほぐしてから、ミサトを無視してシンジ達の前まで歩いていく。

「碇 シンジ君ね?」

「「はい」」

 同時に返ってくる答え。

「それで、どっちがシン「そんな事よりさっさと父さんに会わせて下さい。金髪のおばさん」

ギシッ

 リツコの問いかけを遮ったシンジのセリフに、シオリとミサトは空気が凍りついたのを感じた。

(シ、シ、シンジ!なんて事を………モルモットにされちゃうよ!?)

(なんて命知らずのまねを………)

(このコ、そんなに改造してほしいのかしら?)

 各々が勝手な事を考えていると、シンジは更に言葉を続ける。

「僕達はここの見学に来たのでも、遊びに来たのでもありません! とっとと父さんの所まで案内してください!  じゃなきゃ僕達は今すぐ帰りますよ!」

「………わかったわ。こっちよ」

 この時確かにシオリとミサトは、リツコの額の血管が今にも千切れそうなほど膨れ上がっているのを目撃した。

 

 

 

「………真っ暗ですね」

「今、明かりをつけるわ」

 リツコの言葉通り一拍置いて、明るくなる。

 目の前には紫の鬼と言うのが相応しいほど、凶悪な顔をしたエヴァがドアップで見える。

「人の造り出した人型汎用決戦兵器。人造人間エ「そんな事より父さんは何処ですか?」

 目の前のエヴァを完璧にシカトするシンジ。

(シンジ………なんで、そんなに死に急ぐんだよ………)

(もうダメね。確実に消されるわ)

(ふふふふふふ、リストの一番上に載せておいてあげるわ)

 リツコが頭の中の怪しげなリストに『碇シンジ』の名を 赤文字刻み込んでいると、突如、 頭上から重圧のこもった声が振ってくる。

「お前が乗るのだ、シンジ」

 シンジが上を振り仰ぐとそこには髭面の親父がいた。

 それを確認するとシンジは俯き、身体を震わせた。

 それを見て、ゲンドウは『ふ、シナリオ通りだ』などと思い、リツコは『怯える実験体なんてのも悪くないわね』と思った。

 シオリはそんなシンジを不安げに見ている。

(一体何処で干渉すれば………今、NERVに真実を知られるのはまずい………

 かと言って『ボク』を―――――シンジを見捨てる事なんて出来ないし………)

 が、次にシンジが起こした行動は全員の予想をシオリも含め、大きく外していた。

「このバカオヤジィィーーーーーーーー!!!!」

 シンジの怒声がケージに響き渡る。

 叫ぶのと同時にシンジは上方のゲンドウに向かって持っていた鞄を投げつける。

がんっ

バッシャーン

 もちろんそんな事でゲンドウの前にある強化ガラスが割れるわけは無く、鞄はガラスに当たってLCLの中へと落ちた。

 だが、報告書でシンジの性格を把握していたゲンドウは少々びびった。

(何故だ、シンジ! お前がそんな事をするなんてそんなに俺が憎いのか!?)

 当たり前だ。

「『お前が乗るのだ』だってぇ!? こんなおもちゃなんかじゃ僕はごまかされないよ!!」

「お、おもちゃ………?」

 後ろにいたリツコはエヴァをおもちゃ呼ばわりされて、心に100のダメージを受けた。

「こんな事で僕達の機嫌をとろうったって無駄だからねっ!!  第一、中学生にもなってロボットもらったって嬉しいわけないじゃないか!!」

「………これはお前を喜ばせるために作ったものでは無い」

 ゲンドウがなんとか気を取り直して、言葉を紡ぐ。

「それだったら、何なんだよっ!?」

「『使徒』と戦うためだ」

「しと………? 僕が何でここの名物と戦わなきゃいけないんだよっ!!」

ずるべちっ

 シンジのボケボケな言葉を聞いたネルフスタッフ&シオリは一斉に床へと突っ伏した。

「シ、シンジ、だから違うって………」

 使徒を名物よばわりする理由を知っていたシオリは一足はやく立ち直る。

「……………シンジ、それは誰だ?」

 ようやくシンジが二人いるという異常事態に気付いたゲンドウが、威圧的に質問(威圧的という時点で尋問とも言うが)する。

「なんだって……………!?」

 ゲンドウの質問に驚愕の表情で目を見開くシンジ。

 どうやら、シンジもやっとシオリが妹ではないと気付いて―――――

「父さん!! シオリを認知しない気!? 最低だよ!!」

 いなかったようだ。まったくもって全然。

「何を言ってドガァァァァンぬおっ!?」

ゴシャッ

「ぬおおおおおおおおっっっっ!!??」

ごろごろごろごろごろ

 突然の爆発音と揺れに、ゲンドウはバランスを崩して強化ガラスに顔面を強打し、サングラスが砕け散って目に付き刺さった。

 あまりの痛みにゲンドウは目を押さえて愉快な悲鳴を上げつつ転げ回る。

「くっ、使徒が来たようね」

「碇シンジ君、初号機に乗ってもらえるかしら」

「だから、なんで僕が名物と戦わなきゃいけないんですか!?」

「シンジ、名物じゃないって………」

 ゲンドウの事なんて誰も気にしなかった。

 

 

 

 その頃、使徒が何をしていたかと言うと―――――

のぼりのぼり

えいっ

どごーーん

 よっぽど暇だったのかビルによじ登っては飛び降り、よじ登っては飛び降りを繰り返していた。 他にもビルの上で空を見上げて吠えようとしたり(口が無いので吠えられない)、体育座りをして寂しそうにしていたり。

 見る者が哀れみを抱きそうなほど、暇そうだった。

 

 

 

 そして、某地下組織でももう一人。

「出番は……………まだ?」

 青銀の髪をした少女が自分の病室で来るはずの無い出撃命令(出番)をひたすら待っていた。

 

 

 

 状況が何一つ解決しないまま、第弐話へ続く。

 

 

 


次回予告

『なんでボクが自分をみてドキドキしなくちゃいけないんだ?』

 シオリの中に芽生えた一つの想い。

『妹なんだ!!シオリは妹なんだからそんな事考えちゃダメだ!!』

 苦悩するシンジ。

『男の碇君、女の碇君……………これが『両手に花』ということなのね』

 青の少女は状況にご満悦。

『一体、彼女は何者? ………やっぱり、捕獲して徹底的に調査するしかないわ♪』

 影で怪しい事を考えているマッド。

『ごくごくごく………っかぁ〜、やっぱりビールはえびちゅよね〜♪』

 話にほとんど関わってこない30代寸前のビア樽。

『ぐぅぅ………衛生兵はまだか………』

 息も絶え絶えな忘れ去られた髭。

『ちょっと、アタシの出番はいつよっ!!』

 後、数回は絶対に出番はない赤の少女。

 

次回! 『ボクと僕がらんでぶー』!!

お楽しみに〜

(この次回予告はあくまでフィクションで、本編とはなんら関係ありません)

 

 

 

感想、要望、誤字脱字、何でもいいのでメールまってマース♪

 


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