「なんでこんな事に………なっちゃったんだろ……………」

 少年の呟きは赤い海に吸い込まれていった。

 


 

『ボク』達二人の協奏曲
                        CONCERTO

 

プロローグ   事の終わりと始まりと

 


 

 少年は浜辺に膝を抱えて座り込んで、赤い海をもう何時間も眺めていた。

「………………」

 少年の隣には赤いレオタードのような服を来た少女が横たわっている。

 少女は瞳から光を無くしその心を完全に壊していた。

「アスカ………」

 少年は少女の名前を呟く。

 しかし、反応は全く無い。

「アスカ、起きてよ」

 再び、少年は少女に呼びかける。

 少女が前と同じように自分を罵倒しながら、起きるのを望んで。

「アスカ、起きてよっ!」

ピクッ

「アスカッ!?」

 少女がゆっくりと目を開ける。少年は慌てて彼女の上半身を抱きかかえた。

「アスカアスカアスカ!アスカァッ!」

「……シ……ンジ……」

 少女は狂ったように自分の名前を叫ぶ少年の名前をかすれた声で呟く。

 少年はそれを見て歓喜の表情を浮かべる。

 が―――――

パシャッ

 軽い音を立てて、彼女は少年の腕の中でオレンジ色の液体となった。

「う………あ……………」

 少年は自分の濡れた両手を見て、絶叫した。

「うああああああああああああ!!」

 

 

 

「碇君………」

 自分を呼ぶ声に少年は顔を上げた。

 そこにいたのは少年の知っている青い髪の少女。

「綾波………」

「あなたは何を望むの?」

「望む?………みんながいなくなったこの世界で望むものなんて何も無いよ」

 少年は自嘲気味に言葉を吐いた。

「今の私になら、碇君を過去に戻すことができ「本当なの、綾波っ!!」

 青い髪の少女は自分の科白を途中で遮られ、一瞬不満顔をしたがこくりと頷いた。

「ええ。簡単………というか楽勝

「なら、ボクをあの時に戻して!今度こそ逃げ出したりしない!!」

「分ったわ。………いってらっしゃい」

「って、いきなりなのっ!?」

 少年は少女にあっさりディラックの海に投げ込まれた。

「碇君、あなたは私が守るわ」

 少女も一言そう呟くと、少年に続いた。

 

 

 

 彼らは知らなかった。

 この時に生じたディラックの海に執念深く幾つもの魂が入っていったことを。

 そして、少年が殺したはずの銀髪の少年が怪しく笑っていたことを。

 

 

 


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