前だけを… ショートショート

 

教師の権限


 

>第三新東京市第壱中学校・2−A

「困りましたね〜」

「す、すみません………」

 放課後の教室で対面しているのは2−A担任の老教師と、その生徒碇シンジだった。

 優等生である彼が何故、担任と向かい合っているかと言うと、

「もうちょっと、遅刻の回数減らせませんかねぇ。私としても、あまり五月蝿く言うのは好きでは ないのですが………50回はいただけませんねぇ」

「あう、すみません……」

 

 まあ、そういう訳である。

 遅刻してる理由は当然ながら、一緒に暮らしている家族+2なのだ。

 他の面子の遅刻回数はというと、

 マナ―――32回。

 サキ―――15回。

 ミユウ―――15回。

 レイ・アスカ―――1回。

 上記の遅刻の回数が、シンジの遅刻の原因を作った回数でもあったりする。

 ―――――ようするにシンジは他の面子と違って、遅刻する人を見捨てられなかったということだ。

 ちなみにミユウとサキの15回のうち、8回はシンジに付き合って遅刻した回数でもあるのだが。

「もうちょっと、すんなり起きてくれると助かるんですけど………」

「ほう、碇君は誰かを起こしているのですか?」

「あ、いえ、まあ………家族を……四人ほど……朝食も作らなきゃいけないですし………」

 老教師はシンジの言葉を聞いて、顎を撫でながら軽く笑う。

「それは大変な事ですねぇ……わかりました、今回は大めに見ましょう」

「あ、ありがとうございます!」

「次からは気をつけるのですよ?」

「はい………善処します」

 シンジはちょっと苦笑い。

 言うまでもなく、無理そうだったからである。

「………それに生徒たちには、碇君達の登校がボーダーラインとして役に立っているようですからねぇ」

「……は? ボーダーライン?」

「その通り………まあ、碇君達を見かけたらもう時間ギリギリだという事ですかねぇ」

ガンッ

「碇君達の登校ダッシュは、ここら一帯での名物になってるくらいですから」

ゴンッ

「いやはや、私も先週学校に行く途中で見かけましたが、元気で非常によかったですよ」

ザクッ

 

「………碇君、どうかしましたか?」

 身体を痙攣させながら倒れているシンジに声を掛ける。

「は、はは………なんでもないです(泣)」

 シンジは決心した。

 帰ったら怒ってやる絶対に。

「って、先生………先週見かけたって………僕達が登校してる時間帯にどうやって見かけたんですか?」

 

 

 

「碇君、授業の開始というのは教師が教室に着いた時点で始まるのですよ?」

 

 だめぢゃん。ぷれぜんつばいさつまさん

 

 

シンジ「目次へ戻るからね」



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