前だけを… ショートショート

 

ミユウのキックはでんじゃらす


 

>マナ

 日曜日の公園。

 わたしは何故か、ミユウと一緒に来ていた。

 

「で、ミユウ。わたしをこんな所に連れてきてどうしたの〜?」

「ちょっと訓練に付き合ってもらおうと思って」

「……訓練?」

「そ。身体動かしとかないとすぐになまっちゃうからね」

「で、なんでわたしなのー?」

「う〜ん、マナ戦自で格闘訓練受けてたでしょ? 別にアスカでも良かったんだけど、今日は用事あるみたいだったから」

「サキでも良いんじゃない?」

 わたしがそう訪ねると、ミユウは肩を竦めて言った。

「………あのサキちゃんと訓練でも格闘したいと思う?」

「思わない」

 自分で聞いた癖に即答するわたしだった。

 

 

 と、まあ、そういう訳で格闘技の訓練に付き合わされるようだ。

 わたしはミユウからキックミットを手渡され、1Mほど離れた位置に立つ。

「それじゃあ、行くよ」

「来なさ〜いっ♪」

 お気楽に引き受けたのは良いけど、ミユウの蹴りって洒落にならないほどキレがあるからね。

 真面目に受けないと怪我するわね〜。

 わたしはミユウの足に注目し、何時来ても良いように注意しながらキックミットを構える。

 すーはーっと呼吸を整えたミユウは、わたしを睨みつけ……。

 

 来るっ!

 

 わたしは飛んでくる筈のミユウの足の軌道を読もうと集中する。

 ミユウの足は一瞬あたかも幻の様に揺らめき―――――

 

ドムゥッ

 

 ―――――気付いた時には身体ごと真横にすっ飛ばされていた。

 

 

 

「マナ、大丈夫?」

「大……丈夫………な訳……ないでしょ………」

 地面に転がったわたしは大の字に寝転んだまま(キックの衝撃で起き上がれない)、力なく呻く。

「うぐっ……今の蹴り、何よ……なんで足が残像を残して消えるのよ………っ!」

「早いから」もしくは奥義(笑)

「……今起こった現象の理由を聞いてるんじゃなくて、常識を聞いてるんだけど、わたしは」

「えー」

「………なんで不満顔なのよっ。 おまけにさっきのドムゥって音何? 昔聞いたショットガンの訓練弾が人体に当たる音とそっくりだったわよっ………」

「そんな事言われても………」

「被害者面………するな〜〜〜っ!!

 わたしは喉が裂けんばかりに絶叫しながら、絶対にもうミユウの訓練には死んでも付き合うもんかと青空に誓うのだった。

 

 

マナ「目次に戻るねー♪」



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