前だけを… ショートショート

 

告白はリリンの生み出した文化の極みだよ2


 

>ミユウ

「たいへんたいへんたいへんたいへんだよ〜〜〜〜〜〜!!」

 教室でレイ&マナと談話していた私は、後ろから聞こえてきた声に反射的に身構えた。

 

ぱし

 

「え?」

 

ひょい

 

「あーーーーーー」

 見事な軌跡を描いて窓から落ちていくサキちゃん……………って、サキちゃん!?

「う〜ん、今のは中段のみ可の見事な当て身ね〜」

「タイミング、角度、飛距離………全て理想的」

 今の私の技を批評するマナとレイ。

 意外と高評価だ。

 ……………じゃなくて。

「む〜〜〜〜! ミユ、ひどいよっ!!」

「………サキちゃんも平然と戻ってくるし」

 空中で体勢を立て直して着地したのだろう、多分。

 それは良いとしても、垂直ジャンプで3階の教室の窓に飛びつくのはやめてほしい。

「それで、何が大変なの?」

「あっ、そうだった! おにいちゃんがたいへんなんだよっ!!」

「「シンジ(君)が!?」」

 がたたんっと立ちあがる私とマナ。

「……………碇君は私が守るもの」

 などと抜かしながら、さっさと教室を出て行こうとするレイの首根っこを掴む私。

「シンジ君に何があったの?」

「と、とにかく来てよっ!」

 

 

 

 校舎裏―――――。

「なるほど………確かに『たいへん』ね………」

 校舎の影に隠れている私たちの視線の先にはシンジ君と―――――後輩らしき、下級生の女の子がいた。

「あの人、『らぶ・れたー』でおにいちゃんを呼び出したんだよ! このままじゃ危険だよっ!」

 サキちゃんが手をぶんぶん振りながら訴えてくる。

「………目標を確認」

「レイさん、1、2の3でファイア(発射)だからねー」

 レイとマナはエアガンを装備して殲滅するタイミングを見計らっている。

「レイ、マナ………それは最後の手段よ。とりあえず、様子を見ましょう。シンジ君だから、OKするとは思えないし………」

「………そんな事を言っていて万が一の事があったらどうするの?」

「う゛………」

 レイの突っ込みに冷や汗を流す私。

「あ、相手が動くよ!」

 サキちゃんの言葉に私達は一斉に視線を向ける(レイとマナはエアガンも向ける)。

 

 

 

「何の用?」

「そ、その………い、碇先輩、付き合ってください!」

「え? ………別にいいけど」

 

 

 

がーーーーーん

 蒼白になって倒れそうになる私達。

「「「「そ、そんな………」」」」

 

 

 

「ほ、本当ですか!?」

「それで………付き合うって何処に?」

 

 

 

ドテテッ

 一斉に地面に突っ伏す下級生と私達。

 シ、シンジ君………レイと同じボケを………。

 

 

 

「そうじゃなくて………(汗)」

 下級生は顔を引きつらせながらも、なんとか立ち上がる。

「私は碇先輩の事が………好きなんです」

「えっ……………」

 

 

 

「ミユ! どどどどどうしよう!」

 サキちゃんが涙ぐみながら、私に振り向く。

「しまった………今の状況で殲滅したら逆効果になる………」

 私は、とっとと行動を起こさなかった事を後悔した。

「………だから、最初に殲滅しておけば良かった」

「ほんとよー」

 レイとマナが私に文句を言ってくる。

 確かにこれは私の作戦ミスだ。

 

 

 

「もしかして………『付き合って』ってそう言う意味?」

「はい………」

 シンジ君の言葉に、苦笑しながら頷く下級生。

「それで………付き合って貰えますか」

「……………ごめん」

 

 

 

「「「「やった!」」」」

 全員が揃ってガッツポーズ。

 

 

 

「今の僕は………誰かと付き合う気は無いんだ………本当にゴメン」

「いえ………いいんです。あたし、先輩に気持ち伝えられただけで満足ですから………」

 女の子は消えそうな声で呟くと、俯いてひっくひっくと泣き出してしまう。

 ちょっと………可哀相かな。

 シンジ君はそんな女の子を見て――――――ぽんと頭に上に手を乗せた。

 

なでなで

 

「ごめんね………今の僕は恋愛をしてる余裕が無いんだ………」

「エヴァのパイロットだから……ですか?」

「それもあるんだけどね」

 シンジ君は苦笑しながら、下級生の女の子の頭を撫で続ける。

「いろいろと忙しいし………なにより、今の生活を守らなきゃいけないからね」

「それってエヴァのパイロットだって言う理由と、どう違うんですか?」 

「大違いだよ。エヴァのパイロットとしての役割は使徒を倒す事、ただそれだけで、僕の生活は何一つ守ってくれやしないから」

「良く………わかりません。私には碇先輩の言ってる事の意味が」

「判らない方がいいよ、多分」

 

 

 

 私達は神妙にシンジ君の話を聞いていた。

 シンジ君の言った事―――それは、私達を想っての言葉だったから。

「おにいちゃん、シリアスモードに入らないで………ボク、頭痛くなってきた」

 ………サキちゃんだけは意味を理解できずに頭を抱えてうずくまっていたけど。

 

 

 

 しばらく黙って頭を撫でられ続けた女の子だったけど、何かを決心したように俯いていた頭を上げる。 

「碇先輩、恋人がだめなら友達になってくれませんか?」

「友達?」

「はいっ、そうですっ!」

 シンジ君はにっこりと笑顔を浮かべ、

「もちろん良いよ」

 と優しく言った。

「君みたいな可愛い女の子だったら、大歓迎だよ」

 ついでに余計なセリフまで付けて(怒)

 

 

 

ビキッ

 私達の額に青筋が走る。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

「休み時間終わっちゃったね」

「……そうですね。碇先輩、今日はこれで失礼します」

「うん、それじゃあまたね」

 下級生の女の子はシンジ君の手から離れ、校舎に向かって駆け出す。

 ―――――そして足を止め、振り返る。

「碇センパーイっ♪ 私、諦めませんからーーーっ♪」

「え………」

 女の子はそれだけ叫ぶと走り去っていった………。

「ま、まいったなぁ………」

 それを見送ったシンジ君はにやけ面でそう呟いた。

 

 

 

「………レイ、マナ」

「「ファイアッ!!」」

 

バンッ

 

 怒りの銃弾は容赦なくシンジ君を地面にぶち倒した。

 

 

シンジ「目次へ戻るからね」



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