前だけを… ショートショート

 

深く考えちゃダメだ


 

>シンジ

「ふ〜………いいお湯だった〜♪」

 パジャマ姿のマナがタオルで髪を拭きながら、リビングに入ってくる。

「じゃ、次はアタシね」

 アスカはそう言って、タオルと着替え一式を持って立ち上がる。

 

 なんでもいいけど、お風呂時はさすがに居づらいなぁ………

 

 思わず苦笑いを浮かべながら思う。

 女の子ばかりのこのうちで、いくら家族だからといっても男の僕が風呂時に肩身の狭い思いをするのは仕方ないだろう。

 ………せめて、アスカとミサトさんは自分の家の風呂に入って欲しいのだが。

 うちではまず風呂焚き(パネルで設定してお湯を入れる)&掃除をしている綾波が一番風呂に浸かる。

 そのあとはランダムに入っていくのだが………僕は必ず最後に入っている。

 

「マナ、ドライヤーで乾かしてあげるからこっちにおいで」

「はーい♪」

 

 そして、もう一つの決まりごと。

 それは何故か、僕が全員の髪を乾かし、梳いてあげる事だった。

 ―――――ちなみにミサトさんもだ。

 

ごぉぉぉぉ

 

 僕が優しく髪を撫でながらドライヤーで乾かしていく。

 マナは気持ちよさそうに目を細める。

 

 まあ、こんな表情を見られるんだから役得かもね。

 

 

 

 さて、そろそろいいかな………。

「マナ、終わったよ?」

「………すー」

 ………寝ちゃったか。

 別に珍しい事ではない。

 いつも誰か一人は寝ているぐらいだから。

 

「「くー」」

 

 ………ミユウと綾波もソファで互いに寄り添って眠っている。

 しょうがないなぁ………。

「サキ、ミユウを部屋に連れてってね」

 僕はマナを抱き上げながら、サキに視線を送る。

「はーいっ」

「引きずっちゃダメだよ?」

 

ぎし

 

 ミユウの片足を掴んだ体勢でサキが固まる。

「………わ、わかってるよっ!」

 絶対嘘だ。

 

トコトコ

 

 廊下を歩いて、マナと綾波の部屋に向かう。

 

 それにしても………女の子ってなんでこんなに軽いのかな?

 

 ふと、自分が抱いているマナを見てそう思ったりした。

 

 

 

 マナをベットに寝かせ、続いて綾波もマナの隣に寝かせる。

 ………そういえば、ここの部屋ってベット一つしかないんだよな。

 いつもはどうしてるんだろう?

 一緒に寝てるか、それとも下に布団を敷いてるか………って、布団なんて この部屋にないから一緒に寝てるのか。

 けどいくら女の子だって言っても、こんなシングルベットに二人じゃ狭そうだなぁ………。

 

 その時、ついこの間聞いたミユウと綾波の朝の会話(第九話後編参照)が僕の脳裏をよぎる。

 

 

 

 

 

『レイ、今日は(起きるの)遅かったね』

『………マナさんに襲われたから』

 

 

 

 

 

ぐはあっ!

 

 ま、ま、ま、まさか………

 

ガンガンガンガン!

 

 バカな自分の考えを、壁に頭を叩きつけて振り払う。

 ―――――だがそんな僕の努力を嘲笑うかのごとく、眠っているマナが甘ったるい声で強烈な寝言を放つ。

「レイさぁぁぁん………そうじゃなくて、もっと強く〜〜

 しかも、綾波にしっかりと抱きつきながら。

 

 つ、強くってを!?

 

 

 

 

 

 当然の如く、その日の晩は一睡も出来ない僕だった。

 

 

シンジ「目次へ戻るからね」



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