前だけを… ショートショート

 

暇だから


 

>ミユウ

 ……………

 ごろごろ………

 ……………

 ごろごろ………

 ……………

 ごろごろ………

「ああーーーっ! もうっ!! 暇ーーーーーっ!!」

 一人でごろごろ転がっていた私は両手足を振り回しながら喚く。

「暇ーーーー! 暇ーーーー!」

 

ひう〜〜〜〜

 

「うう………むなしい………」

 部屋の中なのに突如吹いた冷たい風が身にしみる。

「シンジ君がいけないんだぁ………。私をこんな独りで生きて行けない身体にするから………」

 

ひう〜〜〜〜

 

 さっきより数倍強く冷たい風が吹く。

「む、むなしすぎる………」

 やっぱり、シンジ君に着いて行けばよかったかなぁ………。

 でも………。

 

 

 ―――回想

『ミユウ。これから、ミサトさんの車で遠くのデパートに行くんだけど………来る?』

『行かない』

 即答だった。

 

 

「こんな時に限ってサキちゃんもレイもマナもアスカも、だーーーーれもいないしぃぃぃ!!」

 ちなみにサキちゃんはシンジ君について行くのを選んだ。

 今ごろ天国に逝っているだろう。

 ………いや、サキちゃんの事だから喜んでるかも。

「………ひまだなー」

 私って一人っきりだと何にもする事ないみたい………。

 ん?

 『一人っきり』!?

 

 

「ふふふふふふ………♪」

 そーっとシンジ君の部屋のドアを開く。

 そう、私が暇つぶしに選んだのはシンジ君の部屋の家捜しだ。

「男の子の秘密はベットの下っていうのが、常識よね………」

 ………『常識』っていうよりは、『お約束』という方が正しいような気もするけど。

 

ゴソゴソ

 

「………何も無い」

 ま、シンジ君だからね………。

 Hな本なんてあるわけないし。

「あれ?」

 と、そこで気付いた。

 ベットの下の奥の方が二重底ならぬ、二重壁になっているのを。

「これ、ベニヤ板を白く塗って壁に見せかけてある………」

 あまりの手の込んだ隠し様に、私はごくりと唾を飲み込んだ。

 

 ま、まさか………シンジ君が………本当にHな本を所持してるなんて………。

 

 って、まだHな本だと決まったわけじゃないね。

 確かめなくちゃ………。

 

パコッ

 

 あ、簡単に外せる様になってる………。

 

 そして、その壁(偽物)の向こう側にあったものは………

 

 

 

 

 

『閻魔帳』

 そう表紙に銘打たれたノートだった。

 

「なにこれ………?」

 ペラぺラッと適当にノートを開くと一行目に『6月9日』と日付が書かれていた。

「なんだ………ただの日記か………」

 胸を撫で下ろした私は、視線をノートに走らせた。

 

『ミユウ ――― 部屋を散らかしている。脱ぎ捨てていた服から見て、今日は同室のサキが汚した訳では無さそうだ。

 サキ ――― 帰りにアイス(80円)を買い食い。

 綾波 ――― 特に無し。

 マナ ――― カードゲーム(2000円)を衝動買い。まだ月の始めなのに、お小遣いが無くなりかけている様だ。

 アスカ ――― だらけ気味。頼んだ風呂掃除も手抜き。

 ミサトさん ――― 基準である三本を超過して、今日は五本の飲酒』

 

ぎしぃ

 

「こ、これはっ!? 『生活態度チェック帳』!?」

 それにシンジ君、私が脱ぎ捨てた服とかしっかり見てたの!?

 ………も、もしかして、たまに脱ぎ捨てた筈の服が綺麗に畳んであるのって、実はシンジ君がやってたっ!?

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 もしかして、ベットの下に隠してあったシンジ君の写真集(相田君経由で入手)とかもばれてるとか………。

 ああああ、ありうるぅぅぅぅ!!

 

ペラペラ

 

 かなり混乱しながらも、『閻魔帳』を読み進めていく私。

 

 

「ひぃっ! どうしてそんな事知ってるのっ!?」

 

「そ、それもバレテーラ!?」

 

「はうううっ!? そんな事までぇっ!?」

 

 

 

 読む事数十分―――――

 

 

 

「え、閻魔帳、恐るべし………」

 好奇心によって失ったものは大きかった。

 世の中には知らない方が幸せな事も多々あるようだ………。

 

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