前だけを… ショートショート

 


 

>シンジ

「ふう………洗濯はこれで終わりっと………」

 僕は洗い終った洗濯物を抱えて廊下を歩いていた。

 

「ぬぬぅ、見たかぎりじゃほぼ互角………」

「むむぅ、確かにそうね………」

 

「へ?」

 何処からか聞こえてきた二つの呻き声………

 僕はきょろきょろと辺りを見回し―――――ミユウの部屋のドアに目を止めた。

 

「?」

 

 中をそっと覗くとミユウとマナが正面から睨みあっている。

 ………はあ、またケンカかな?

 うちの女の子たちは普段は非常に仲が良いのだけど、突発的にケンカすることが多々ある。

 まあ、『ケンカするほど仲が良い』とも言うし、そんなものかもしれないけど。

 

「ミユウ………覚悟はいいわね」

「マナこそ、後悔しないでよ………」

 

 いつもとは違う!?

 まずい、この二人の間に漂う冷気は本物だ。

 まさか、本気で取っ組み合いのケンカを………?

 

「いくわよっ!」

「返りうちにしてあげるっ!」

 

 はっ、ぼーっとしてないで止めなきゃ!!

 

「ふ、二人ともストップッ!」

「80,0!!」

「79,5!!」

 

 僕が飛び込むのと、二人がその数字を言うのはほぼ同時だった。

 

「「「………………」」」

 

 何故かは不明だけど、非常に痛い沈黙が辺りを支配する。

 

「あ、あれ? 二人ともケンカしてたんじゃないの? ………それに今の数字は一体?」

 

「「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

ドバキィィィィィッ

 

「うぎゃああああっ!?」

 

 

 

 

 

>マナ

「わたしの勝ちねっ♪」

「(視線を逸らしつつ)ほ、ほら、シンジ君を介抱しないとっ!」

「現実から目を背けても、私の方が大きいっていう事実は変わらないわよっ♪」

「あうう………(泣)」

 

シンジ「目次へ戻るからね」



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