前だけを… ショートショート

 

禁句


 

>マナ

「〜〜〜♪ 〜〜〜♪」

 鼻歌を歌いつつ、夕食の準備をしているシンジ。

 学校から帰ってきてからずっとごろごろしていたわたしは、シンジの後ろ姿をぼーっと眺めていた。

「ねえ………シンジ?」

「ん、何? マナ」

 上機嫌で鍋の中身をおたまでくるくるかき混ぜていたシンジは、わたしの呼びかけにくるりと振り返る。

「結構前から疑問に思ってたんだけど………なんで、ミサトさんのいない時に限ってカレーなの?」

 

フッ

 

 シンジの顔から表情が消え、レイさんの様に―――いや、レイさん以上に冷たい表情になる。

「………聞きたい?」「………死にたい?」

「え゛?」

 

 

 そ、空耳かな?

 シンジの『聞きたい?』っていうセリフに重なるように『死にたい?』っていう言葉が聞こえたような気がしたんですけど………(汗)

 

 

「聞きたい? 聞きたくないよね? 聞かないよね?

 

ぺちぺち

 

「き、聞かない………」

 本能的な恐怖と頬を叩く包丁の冷たい感触に、ぶんぶんと首を縦に振るわたし。

 

「そう、良かった」

 シンジは表情を元に戻し、鍋の元へ帰っていった。

 

 い、一体カレーに何の秘密が………?

 

がちゃ

「ただいま〜」

 

 わたしが恐怖で腰を抜かしていると、玄関からミユウの声が聞こえてくる。

 震える足腰をなんとか立たせて、ミユウの元へ向かう。

 

「ミ、ミユウ………」

「マナ、どうかしたの? 顔真っ青だよ?」

「シ、シンジにカレーの事を聞いたら………」

 

どごすっ

 

 ………わたしは即座に蹴り飛ばされて、意識を失った。

 ちなみに一時間後、意識を取り戻したわたしは、その日半日の記憶を無くしていた。

 

マナ「目次に戻るねー♪」



アクセス解析 SEO/SEO対策