>シンジ
「そんなの、シンジ君に決まってるじゃない」
「って、ミユウ。いきなりサブタイトルに喧嘩売らないでよ(汗)」
現在、日曜のお昼時。僕はリビングでぼーっと座っていた。
ざくっざくっ
ぐつぐつぐつぐつ
ぼぉぉぉぉぉぉ
キッチンからは何かを切る音、茹でる音、焼く音………さまざまな音が聞こえてきている。
しかし、『ぼぉぉぉぉぉぉ』って一体、何で何を焼いているのだろうか?
………怖いから考えない事にしよう。
事の発端は一時間前、ミユウの発言からだった。
「シンジ君、私が作ろうか?」
昼ご飯を作ろうとキッチンに向かおうとすると、ミユウがそんなことを言ってきた。
「え?」
「ほら、シンジ君も毎日毎日家事で疲れてるでしょ? だから、今日のお昼は私が作ってあげる」
「できるの?」
「む、シンジ君、私の腕信用してないんだ。前に作ったカレー美味しくなかった?」
「それは………美味しかったけど」
ミユウ達がカレーを作ってくれた後のキッチンの惨状を思い出す。
……………
……………
……………
どう考えても、家事より疲れるよ(汗)
「おにいちゃん♪ ミユが作るのが心配ならボクが作るよ♪」
「ちょっと、サキちゃん! 心配ってどういう意味!?」
途中から話に割り込んできたサキの言葉に、ミユウは顔を真っ赤にして怒鳴る。
「だって、ミユって頼りないからね〜」
やめてくれ、サキ………
ミユウの機嫌が悪くなって一番被害をこうむるのは僕なんだよ(泣)
「………勝負よ、サキちゃん。どっちが頼りないか教えてあげるわ!」
「いいよっ! ミユなんかに負けないもんっ!」
ああ………二人の間に殺気が漂ってるよ………。
二人とも普段仲いいのに、どうも競争心丸出しになる時があるんだよな………。
なんでだろ?(←鈍感)
「「シンジ君(おにいちゃん)!!」」
「は、はひっ! なんでしょうかっ!?」
思わず直立不動になって返事をする。
「「料理の判定、シンジ君(おにいちゃん)がしてねっ!!」」
「え゛!? ちょ、ちょっと!!」
ダダダダダダッ
僕が断る前に二人はキッチンへダッシュしてしまった。
「あーーーー!! なんで、レイが作ってるんだよーーー!!」
「私が碇君のご飯作るの……………サキとミユウは用済み」
「シンジ君のご飯は私が作るんだってば!!」
………あう。
もう一人の競争心を妙に駆り立ててる存在忘れてたよ………(泣)
と、言うのが発端だったんだけど………。
がちゃーん
ばこっ
ぱりーん
はあ………片付けは大変そうだ(泣)
「さー、遠慮なく食べて!」
「ミユのなんかより、ボクの方が美味しいよ!」
「食べて………」
僕の目の前には3つの料理………。
チャーハン(らしきもの)
肉(ハムを丸ごと焼いたらしい)
野菜炒め(肉抜き)
あ、あはは………誰が作ったか一目瞭然だね………。
「それじゃあ、とりあえずチャーハンから………」
って、なんでチャーハンこんな色(紫色)してるんだ?
「最初会った時、シンジ君、チャーハン作ってくれたよね。私、シンジ君のチャーハン思い出しながら作ったんだ♪」
ミユウが顔を赤くして『てへへ』と照れ笑いを浮かべる。
……………はっ!
まずいまずい、思わず見惚れてぼーっとしちゃったよ。
「それじゃあ、頂くね」
「どうぞ、召し上がれ♪」
スプーンを手にとって一口。
ぱくっ
……………はっ!
さっきとは違った意味でぼーっとしちゃったよ(汗)
そ、それにしてもこれは………
「どう、シンジ君?」
「な、なにを入れたの?」
「え、マヨネーズとー、ケチャップとー、唐辛子を隠し味に使って………」
……………
どう考えても隠し味っていうレベルじゃないんですけど(泣)
マヨネーズとケチャップと唐辛子が………調味料の限界の限りを尽くさんばかりに自己主張してるし。
はっきりいって………エグイ味だ。
「ねね、どうだった?」
「ほ、ほら、他の人の食べてみないとね………」
「あ、そうね」
なんとかごまかして次に向かう。
肉だ。
しかも………完璧に黒焦げ。
つーか、炭。
「おにいちゃん、早く食べてよ♪」
「う、うん………」
炭って確か発ガン性物質とか、含んでたんではなかろーか………。
はっきり言って食べたくない………しかし
「は・や・く♪ は・や・く♪」
サキ、そんなに嬉しそうな表情で見つめないで………(泣)
くっ、こうなったら覚悟を決めて………
バクッ
……………はっ!
危なく、川を越える所だった………(汗)
それにしても、このきつい苦味は焦げていた事から予測(覚悟ともいう)していた。
だけど………この死ぬほどの甘さは何だ!?
「ボク、甘いの好きだから砂糖い〜っぱいかけたんだっ♪」
さ、さとーですか?(汗)
「おにいちゃん、美味しい?」
「最後のを食べてからね………」
で、最後の肉抜き野菜炒めなんだけど………。
まともだ!! すっごくまともだ!!
少なくとも見た目は変色してたり、焦げてたりしてない!
………当たり前の事で感動している自分が悲しい。
「………私、がんばった」
「じゃあ、食べるよ………」
やっと、まともな物が食べれそうだ………。
パクッ
ぐふぅっ
味がない………。
それは一万歩譲って良いとしても―――――
な、なんで身体が痺れるんだ!?
「な、なひいれはの………?」
(↑『な、何入れたの?』と言っている)
「キャベツ、タマネギ、ピーマン、きのこ、ナス………」
きのこってなんだ!?
綾波はこちらの疑問を察して答えてくる。
「………マンションの庭に生えてた」
それはいろんな意味でやばすぎるよ、綾波ぃーーー!
『セイ○クハンテンダケ』とかだったらどうするんだよっ!!
っていうか、パクリは絶対にマズイよ!!
いろいろな葛藤はあったが痺れの所為で口に出す事すら出来ない。
「それで、シンジ君♪ 感想は?」
「もちろん、ボクの美味しかったよね♪」
「………私の野菜炒め」
どうして………
前に三人が作ったカレーはあんなにも美味しかったのに………
今回に限ってなんでこんな料理が出てくるんだ………?
……………はっ、そうか。
前のカレーは3人の愛と勇気と友情が生み出した奇跡だったんだ。
一人一人だとこんな料理の名を借りた兵器になってしまうんだね………。
「「「誰の料理が、一番美味しい?」」」
「………こ」
「「「こ?」」」
「こんな料理は人類の敵だー………」
最後に某キャラの台詞を漏らすと、僕は意識を手放した。
絶対この三人に、料理の勉強させなくちゃな………。