前だけを… ショートショート

 

3匹が行く そのいち


 

>ミユウ

「二人とも、心の準備はいいわね?」

「うん、ばっちりだよ♪」

「ええ」

 

 私がサキちゃんとレイに確認をとると、二人とも同時に頷く。

 

「作戦を念のために確認するわよ。

 まず、私が最初に正面から突入、陽動………囮になって妨害者の目を引くわ。

 次にサキちゃん。あなたは第二の陽動よ。時間差で私の援護をして」

 

 私の言葉に真剣な表情でこくりと頷くサキちゃん。

 

「そして、レイ。………その隙にあなたが目標を妨害者の死角から確保―――奪取して」

「………わかったわ」

「本作戦は非常にリスクを伴い………そして、同時に成功時の見返りも大きいわ。 絶対に失敗は許されない…………」

 

ごくり

 

 私たちは一斉に唾を呑みこむ。

 

「各自、武運を祈るわ。10分後、作戦開始よ!」

 

 

 

>シンジ

「〜♪〜〜♪〜〜〜♪」

「シ、シンジ君」

 鼻歌を歌いながら料理をしていた僕はミユウの呼び声に振り向く。

「何、ミユウ?」

「そ、その歌、なんて言うの?」

「え? 『FLY ME TO THE MOON』って歌だけど………それがどうかしたの?」

「え、いや、いい歌だな〜って………」

 ミユウの不自然な口調に手を止め、意識をそちらに向ける。

「ミユウ? どうかしたの?」

「あはは………な、なんでもないんだけどね………(汗)」

「ふ〜ん………」

 何か釈然としなかったが、料理の方に意識を戻そうとして―――――

「おにいちゃ〜〜〜〜〜ん!! ねえねえねえねえねえねえねえねえ〜〜〜〜!!」

 キッチンに飛び込んできたサキの大声に邪魔をされた。

「サキ………『ねえ』は一度でいいの。それで、どうしたの?」

「え……………」

 まるで心外な事を言われたように、言葉を詰まらす。

「?」

 その態度にやはり、僕は何かを感じた。

「ええっっとととと!! めのさっかくでおにのかくらんだよ!!」

「………サキ、ミユウ。さっきから二人とも、何言ってるの?」

「え、あ、なんでもないの、じゃあねぇ〜〜〜〜〜!」

 ミユウは慌てふためくサキちゃんを抱えてリビングへと消えていった。

「………なんだったんだろう?」

 僕はしばらく呆然としていたけれど、気を取り直し作業に戻って…………………!?

 まさか………。

ガチャ

 もしやと思い、冷蔵庫の中を見ると想像通り無くなっていた。

「や、やられた………」

 僕が今日買ってきたチョコレートケーキは、影も形も無かった。

 どうやら、僕の注意が逸れた隙に持っていかれたらしい。

「……………まったく、ご飯食べてからっていったのに」

 はあ、と僕は溜息をついた。

 

 

 

>リビング

「美味しい〜〜〜♪」

「はむはむはむ………でりしゃす〜♪」

「……………美味♪」

 

ミユウ「目次に戻るよ」



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